2008年8月31日

学区撤廃の行方 和歌山県からの報告 B全県一区と連動した統廃合
大成高校→  2005年から募集停止、海南高校との統合案が提案されたが、分校として当面存続することに
周参見分校→ 2006年度から募集停止が提案されたが、当面存続
古座高校→ 2007年度から串本高校に統合し募集停止が提案されたが、分校として当面存続
和歌山県の学区撤廃では、もうひとつ大きく動いたことがあります。トップダウンの「教育改革」が進められ、全県一区化は一定の保護者の賛成もあって、何の説明もなしにすすめられてきました。

全県一区の中で「人気のある高校」と「人気のない高校」が出てきました。「行革」の流れの中で、和歌山県でも「人気のない高校」を廃校にする動きが起こり、2003年の学区制廃止から1年後、早くも統廃合案が発表されました。トップダウンのマスコミ発表で、海南高校と大成高校を統合し、大成高校を廃校に。70km圏内に学校のないすさみ分校と古座高校の廃校という案でした。

「廃校反対」が全県に

廃校対象となった3校を中心に全県的な反対運動が起こりました。地域の学校をつぶすことは、通学区撤廃とは影響が違うということで、各地でのろしがあがりました。「存続させる会」がつくられ、生徒会が署名を始め、地域に学校を残すためのフォーラムをつくるなど、全地域で保護者を巻き込んだ運動が起こりました。

例えば、すさみ町というのは本当に小さな町ですが、結成総会に45団体が加盟し、二百数十人が体育館に集まりました。漁業団体や猟銃組合まで地域に学校を残すために参加しました。会長は、すさみ町議会議長が務めました。古座高校では同窓会長の郵便局長が「存続させる会」の会長になり、大成高校でも存続運動が起こりました。

和歌山県の人口は100万人ですが、1カ月半で高校存続を求める13万5000筆の署名が集まり、いっせいに報道されました。世論が広がる中で、大成高校は、地元選出の自民党の県議を窓口に大成高校を存続させる請願を出す運動が広がり、県議会で全会一致で採択されました。

このような結果、大成高校と古座高校は普通科40人2学級、分校舎という形で、地域に学校が残ることになりました。すさみ分校も存続しました。父母と地域が共同して運動をすすめ、同窓会やPTAの思いが地域といっしょになり署名が広がり、存続させる会の結成、各地域の運動が全県下に世論を巻き起こしました。

存続運動を通じて生徒も成長しました。地域の声を学校に、生徒の声を地域に反映する学校作りがすすみました。こういった力をこれからの教育に生かしたい。

「構造改革」路線の中で地域は大変な状況です。古座も大変です。「この運動は高校を地域の手に取り戻す運動だ。『構造改革』を教育に持ち込まないで欲しい」。古座高校を存続させる会の会長を務めた郵便局長の言葉です。

和歌山ではトップダウンの「教育改革」が続いてきたのですが、これ以降は止まっています。地域の運動を根拠に、保護者、地域の意見を教育に生かして、県教委に発信していきたいと思います。(おわり)

※この連載は7月28日に和歌山高教組の打井幹人書記長が高知市内で行った講演をまとめたものです。

@2003年トップダウンで全県一区へ
A学校間格差 二極化が拡大

(2008年8月31日 高知民報)