2008年8月10日

学区撤廃の行方 和歌山県からの報告 @2003年トップダウンで全県1区に
給食民営化方針を説明する吉川教育長(
2003年度から県立普通高校の通学区域が撤廃された和歌山県の状況について、和歌山高教組・打井幹人書記長による報告の要旨を紹介していきます。7月28日、高知城ホールで開かれた学区制撤廃の問題点を学ぶ学習会で報告されたものです。

和歌山県では「高校選択の自由」、「各高校が特色づくりで競い合い、魅力ある学校にしてもらう」、「交通事情の改善」などと主張する県教委のトップダウンで、03年度から県立高校の学区制が撤廃されました。

それまで和歌山県の学区は、9学区(伊都、那賀、和歌山北・南、海草、有田、日高、西牟婁、東牟婁)に分かれていました。和歌山県は北に大阪、東側は奈良と三重に接しています。北東部には高野山があり、ふもとを紀ノ川が流れています。もとは8学区でしたが、あまりに和歌山市内の競争が強まり「困難校」と「進学校」の格差が激化したため和歌山北・南学区がつくられました。

高野山のある伊都。和歌山市の東の那賀。和歌山市内の北学区と南学区。その南に海草。さらに南にミカンのおいしい有田、梅干産地の日高、そして西牟婁、三重県に隣接する東牟婁。

単位制普通科、専門学科、職業学科、定時制、分校には学区がありませんでした。和歌山では私立高校が中高一貫、進学クラスをつくり東大・京大などの進学率で公立を引き離し、私学に成績上位の生徒が進学しています。このため公立の「進学校」は、実質的に進学に特化した学科を設置し生徒を確保しようとしてきました。理系・文系の「専門学科」です。しかし、各校に設置されたので生徒の確保は難しい状況でした。その中で「学区があると普通科高校の選択肢が少ない」と学区撤廃が進められました。

学区撤廃後の状況

03年度の学区撤廃で、旧学区からどのように生徒が動いたのか。平均で約14・5%の生徒が、旧学区外の普通高校に進学しました。和歌山市の北学区と南学区の「進学校」は駅の近くということもあり、旧学区外からそれぞれ47%、42%の生徒が入ってきました。また県南部でも21・3%学区外から入っている高校がありました。

通学距離はどうなったでしょうか。ある高校では、遠距離通学生が20数人おり、通学時間が2時間以上の生徒もいる状況。また「玉突き」で、どうしても学区外に通わざるを得ない高校生が増えています。

試験前に旧和歌山北学区・南学区には多くの生徒の流入が予想されたため、逆に受験生に回避され、隣接する那賀に受験者が集中しました。那賀は地元志向が強いのですが、和歌山市内からの受験生流入により那賀郡全体で94人の不合格者が出ました。また伊都からも、放り出されて和歌山市に通う生徒が増えています。子どもたちが、「玉突き」状態で遠距離の高校へ進学を余儀なくされています。

この時点でも県教委は「旧学区外からの受験率は予想の範囲内。地元志向が強かった。旧学区外からの受験は今年と同程度になるだろう」と話していますが、その後はどうなっていったのでしょうか。私たちは3年間の実態調査をしました。(つづく) (2008年8月10日 高知民報)

A学校間格差 二極化が拡大