2008年8月24日

学区撤廃の行方 和歌山県からの報告 A学校間格差 二極化拡大
旧学区外から進学した生徒の割合  ()が旧学区、03年から学区を撤廃
02年 03年 04年 05年
向陽(和歌山北) 0・7% 31.5% 55・8% 46・3%
桐蔭(和歌山南) 3・1% 42・5% 51・5% 53・9%
和歌山東(和歌山南) 7・1% 25・9% 25・8% 46・9%
貴志川(那賀) 4・8% 14・6% 14% 26・1%
南部(日高) 0% 21・3% 21・4% 26・3%
伊都地方、那賀地方ですが、伊都は隣は奈良県ですから流入はそれほどありませんでした。しかし、和歌山市に隣接する那賀の那賀高校(地域の「進学校」)には、和歌山市からの進学が増えて旧学区外の生徒が増加しています。

また成績からいえば那賀では下位の貴志川高校には、和歌山市ではじき出された子ども達が通学しています。はじき出された生徒が貴志川高校に集中したことで、玉突きで押し出された生徒がさらに和歌山市の和歌山北、和歌山東といった高校に1時間半ほどかけて通う現状があります。

和歌山市周辺の状況はどうでしょう。和歌山北学区の「進学校」・向陽高校の05年度の旧学区外率は46・3%です。

また教育が「困難」といわれている和歌山東高校。ここは、「困難」であるにもかかわらず、今まで切れていた倍率が切れなくなりました。05年度は他学区から46%の生徒が来ていますが、朝来ていない、4時間目から来る、授業中なかなか座っていられない生徒もいるなど教育が大変な状況になっています。

成績上位の学校は、最高点が良くなっています。逆に成績下位の学校は、最低点が低くなり、困難を抱える生徒が集中しています。

県内一の「進学校」・桐蔭高校には、やはり学区外からの進学が殺到しています。05年度の調査では学区外率が半分を超え53・9%です。ここへは日高、西牟婁など遠方から電車で通ってきますが、この生徒は行きたくて行くので続きます。しかし、行くところがないからと遠くの学校に通う生徒は大変で、なかなか続かなくなっています。

1年目に、和歌山市内に受験が集中するということで、今までなら、桐蔭高校を受験していた子がその次の星林高校に行き、競争率が跳ね上がりました。県南部でも1校だけ学区外率が21%を超えた高校がありました。駅の近くにある南部高校(日高)です。今まで南部高校にきていた子が県北部の高校に通うようになりました。それによってはじき出された子が行くところがないので、県南部に来るという現象が起こりました。南部高校は最近、暴力事件が起きたり、教員が病気になるなどなかなか授業が困難な状況になってきています。

困難になる教育活動

学区撤廃による影響をまとめますと、@通学圏の広域化・遠距離化による教育活動の困難化が見られます。生徒もなかなか困難を抱えています。そこしか行けないということで、2時間かけて遠くの学校に電車で通うわけですから、もう毎日がもたない。問題行動が起こった時など、教員が家庭訪問に行くのにも大変です。地域の懇談会も今まではできていましたが、全県一区になってから開催が難しくなり、地域の学校としてのあり方、役割も問われています。

A「学校間格差」のさらなる拡大がすすんでいます。出来る子は「行きたい学校」に、しんどい子供は「行ける学校」にという二極化が進行しています。進学校においては、「入試平均点や学力が上昇した」、「生徒指導面で落ち着きが見られる」と報告されています。しかし「困難校」では「学力差が下位でいっそう広がっている」という声が寄せられていて、生活指導も大変な状況になっています。(つづく) (2008年8月24日 高知民報)

 @2003年トップダウンで全県一区へ