連載  百条委と知事選の取材メモから
                        2度の知事選挙で明らかになったものは


R横矢氏・和住工業が自民党県連に2500万円献金

        平成15年度自民党県連政治資金収支報告書

橋本氏が知事を辞職し5選にむけて走り出した10月中旬、反橋本勢力は対抗馬をなかなか決めることができませんでした。その背景には、「昨年落選した松尾徹人・前高知市長では勝てない」という声や、昨年の選挙での費用負担をめぐっての松尾陣営内の不協和音等がありました。自民党内には「不戦論」もあり、他の政党も日本共産党以外は態度をなかなか明確にしようとはしませんでした。

その中で有力候補として急浮上するのが中谷元県連自民党県連会長(衆議院議員)。政治と金のあり方で「疑惑」を追及してきた自民党県連が、自ら談合をクロ認定した建設会社(大旺建設)と一体の中谷氏を候補に担ぐという無神経さは、県民の感覚との乖離したものでした。元木益樹幹事長らは中谷氏に強力に出馬を要請しますが、中谷氏は「県議の尻ぬぐいをなんでしなければならないのか」と出馬を固辞したと言われています。

このような状況下、自民党県連に激震が走る事実が発覚。昨年夏、国分川右岸の土地問題で県の判断を自社に都合の良いように変えさせようと当時の橋本大二郎知事に働きかけ、要求が通らないとみるや笠誠一氏・依光隆夫自民党県議と一体になって「知事選挙資金疑惑」を仕掛けた和住工業の横矢忠志社長が、昨年、自民党県連に個人・企業分合わせて2500万円の献金をしていたのです。


  和住工業が不法占有している国分川の土地
 
献金時期は平成15年10月23日。国分川土地問題に関して県議会百条委(元木益樹委員長)が調査をしている真っ最中に(百条委設置が同年10月10日、11月21日に横矢氏の証言)、元木委員長が幹事長という最高幹部をつとめ5人の百条委員が所属する自民党県連に、調査される対象の横矢社長が過去に例のない巨額献金をしていました(横矢氏と和住工業は自民党県連に平成10年以後献金をしていない。平成15年10月に突如として桁違いに多額の2500万円もの献金をした)。平成15年の自民党県連の収入は約1億円。実に年間収入の約4分の1を横矢社長と和住工業がまかなう異常な癒着ぶり。横矢氏の動向が百条委で焦点となっていた時期に、横矢氏側から自民党県連へ2500万円もの大金が渡っていたことは、委員会の公正さを疑わせるに充分でした。

松尾氏が出馬表明

中谷氏が出馬を固辞し、反橋本勢力が手詰まりになる中、フライング気味に松尾氏が再出馬を表明したのが10月17日。記者会見では「説明責任を果たすのがリーダーのあるべき姿」とリーダー論を展開しました。この会見では松尾氏が高知市長時代に「特定市民」問題が深刻化したことへの質問に対し、「弱い職員がいるのは確か」と責任を下部に押し付ける発言をしていたことが後日問題化しますが、これもまた高知新聞は報じませんでした。

松尾陣営は出馬まではゴタゴタしたものの、11月13日の告示日にむけ急速に求心力を高め、橋本県政打倒で「一致団結」。自民党は本部推薦(前回は県連推薦)、公明、社民、連合、部落解放同盟県連、県職労などで、1年前よりも数段厚い陣容。橋本陣営は無所属県議と草の根グループを柱に日本共産党が独自の立場で支持しました。

松尾陣営のスタートのもたつきから、橋本陣営には楽観ムードが流れますが、松尾陣営は猛烈な勢いでダッシュ。11月7日に新阪急ホテルで開かれた総決起集会も立錐の余地もない熱気で「打倒橋本」へ気勢を上げる迫力あるものでした。(中田宏)