国分川右岸不法占有 土地問題全容を土木部が報告
県が和住に現状復帰を求めている国有地(高知市南久保)
10月3日の県議会予算委員会で橋本大二郎県知事は、「選挙資金疑惑」の背景に土地問題で業者から圧力があった」と答弁しましたが(内容は後述)、この業者とは国分川右岸(高知市南久保)の国有地を不法占有していることから県が現状回復を求めている株式会社・和住(高知市中宝永町)の横矢忠志社長です。
■「疑惑」発信は和住
知事答弁と笠誠一氏の証言を総合すると、横矢社長は元木益樹・自民党県議の仲介で7月8日に知事室を訪ね、国分川右岸の土地について県の判断の変更を要求したものの拒否されたことから、「選挙委資金疑惑」の下書きを見せて「こんなことがある。4期目は考え直してほしい」と知事選への不出馬を迫ったことが浮かび上がります。
自民党・依光隆夫県議(横矢氏が経営する和住工業から関連団体に献金を受けている)の質問に端を発した「疑惑」は、橋本知事が業者の要求を拒否したため、思い通りにならない知事の首のすげ替えを狙い仕掛けられた構図が鮮明になりました。
橋本知事の答弁 笠氏に、この話を持ちかけた高知市内の企業経営者がいる。7月はじめに来て、高知市内に持っている土地について、高知県の判断を覆してほしいと言った。覆すことはできないと言うと、今回問題になっているメモの下書き、12年前にこんなことがあった。4期目は考え直してほしいと言って帰った。土木部には何も伝えていない。笠氏とこの方が連携して、議会関係者に持っていった経過がある。
南久保の現地に立てられている看板 |
■国分川右岸の土地問題
県はこの川底を一時は1億8445万円で買おうとしていた
では発端になった国分川の土地問題とはどういうものでしょうか。10月8日の県議会企画建設委員会で、県土木部は和住側との争いの全容を報告しました。
問題の場所は高知市南久保。卸団地の東側の堤防周辺、約2万6000平方メートルの土地です。和住側は境界が未確定のままこの土地を(3分の2は川の水面下)、94年5月に購入しています。
県土木部は、「98豪雨」後の防災工事のためという名目で、この土地を和住側から1億8445万円で買い取る方針をとりますが、和住側は隣接する資産的価値の高い国有地(弥右衛門都市区画整理事業の施行地と隣接)と、自社の土地との交換を要求し不調に終わります。国は個人との交換は認められないという見解をとり、同部も2002年4月以降は「河川区域にあたる土地は河川法上、買収の必要はない」という原則的な立場に立ち返って「土地は買わない。交換もしない」という方針を固めます。
見波潔土木部長は「一時期とった買うという方針は誤りだった」と答弁。同部長は、この土地問題について県議から「調査を受けた」と述べ、「働きかけ」があったことを示唆しました。
この問題が橋本知事に報告されたのは2002年6月。報告を受けた知事は、「川の底を1億8000万円で買うことは県民に説明がつかない。業者側が訴訟に出ても受けて立つ」と、これまでの土木部の対応を批判し、妥協せず原則的な立場で対応するように指示しました。和住は2003年10月現在、国有地を埋め立てて不法占有を続けており、県は現状回復を求めています。
■自民・土森議員が高買のススメ?
8日の企画建設委員会の審議で自民党・土森正典議員は「買うといいながら、やはり買わないという県の対応は大問題だ。業者が怒るのも当然」と、「二束三文」の土地を高買いすべきだったと言わんばかりの論法で和住側の弁護に終始しました。ただ自民党議員団の中にも今回のゴタゴタに批判的な議員も多く、足並みは揃っていないのが現状です。
日本共産党と緑心会の牧義信議員は、「和住の常識外れな要求と、一時的な県の対応の誤りが問題を複雑にしたが、その後県がとった対応は極めて正しい。不法占有を早期に正常な状態に戻すためにきちんとやってほしい」と指摘しました。
問題の土地周辺の地図
※国分川右岸の土地問題は2006年に訴訟で和住側の主張が退けられ終結。その後、和住側が当該用地を買収し、転売して解決しています。