2007年12月2日

連載 続・高知市同和行政の今
@失業保険の給付期間延長

高知公共職業安定所(高知市稲荷町))
2006年から2007年にかけて「高知民報」で31回にわたって連載した「高知市同和行政の今」。一般にはベールに包まれていた岡崎高知市政における同和行政の実態を明らかにしたものとして評判になりました。11月25日に投票された高知市長選挙では、岡崎市政における同和行政への市民の批判が示されながらも、岡崎市政は2期目をスタートさせることになりました。前回の連載で書ききれなかったもの、その後の変化などについて、改めて高知市の同和行政について連載で紹介していきます。

雇用保険法22条には「就職困難者」について、雇用保険の失業手当の給付期間を延長することができる旨の規定があります。「就職困難者」とは、障害者や「社会的事情により就職が著しく阻害されている者」とされていますが、平成13年度以前、国レベルの同和行政が終結するまでは、同和地区出身者は「就職困難者」に該当するとされており、同和関係者(属人)への個人給付的な特別対策として、失業給付の延長が受けられることになっていました。

しかし14年度以降は同和行政を根拠付ける法律が失効したため、同和地区出身者というだけでは「就職困難者」として認定されることはなくなりました。ところが、これは表向きの話でしかなく、実体的には今もこの制度は温存されています。根拠となる法律がないにもかかわらず、同和関係者に特別対策を施す制度が残っているという矛盾の中で、異様な運用が行われています。以下「就職困難者」の認定について、また高知市の同和行政との関わりについて見ていきます。

隣保館連携方式

「平成14年度以降における就職困難者の確認について」という高知公共職業安定所が発行した文書があります。「公共職業安定所長が、以下により隣保館と連携(隣保館連携方式)して、所要の確認相談を行ったうえ、就職困難者として認めることとする」

35歳以上の旧同和関係者が隣保館(高知市の場合は「市民会館」と呼んでおり、旧同和地域に11館ある)と「相談」さえしていれば、従前と同じように「就職困難者」として認定し、失業給付を延長するというものです。高知市の同和行政を所管する市民生活部の吉田充部長は、旧同和地区内の「属人」を判別することができる実質的な「壬申戸籍」・「部落民名簿」である「世帯票」の廃棄を迫られた際に、「雇用保険給付延長の就職困難者認定のために世帯票が必要」と述べ、世帯票を廃棄しない理由に「国が就職困難者として『属人』の証明を求めている」ことをあげました(2007年10月3日、県人権共闘との話し合いの席で)。

認定の実際
 
では「認定」の実際はどうなっているのか。根拠法のない中で国が「属人」確認を自治体に要求しているとすれば重大問題であることから、厚生労働省本省に「就職困難者の認定に『属人』の確認が必要なのか」と問い合わせました。

対応した係官は「同和関係者を直接の理由にしたものではない。低学歴であるとか、高齢などの理由によるもので、同和関係者であるかどうかの証明など必要ない」と回答。

続いて高知労働局職業安定部では「『市民会館』に就職相談をしてきたと相談票に本人が書けば、困難者として認めている。『属人』かどうかを『市民会館』に問い合わせることなど絶対ない」。同局の関係者は「国は激変緩和ということでこのような制度を残したのだろうが、自己申告だけで認定されるのはおかしいと思う」と話しました。

さらに「市民会館」に実際の運用を問い合わせると、「相談票にこちらが判をついたりすることはないし、『属人』かどうかをチェックしたこともない」。

実際の認定は、「『市民会館』で相談した」と自ら相談票に書いていれば「就職困難者」として認められるというあいまいなもの。「属人」の確認などは行われておらず、吉田部長の発言は事実に反するものでした。あいまいな根拠の自己申告で給付延長が認定されてしまうのはおかしいが、厳密に「属人」のチェックはできないというジレンマから、このようなおかしな運用になっているものと思われます。

雇用保険の失業給付の延長については国レベルの問題ですが、高知市がこれを「世帯票」を廃棄しない理由にすることは、運用の実態とも食い違っており、許されるものではありません。(2007年12月2日高知民報)