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高知市版「壬申戸籍」といえる「世帯票」。長期に更新されておらず、記述と実際のズレは大きい |
高知市内に11館存在する同和行政の拠点施設である「市民会館」(朝倉総合、朝倉、西山、松田、海老川、小高坂、潮江、小石木、長浜、一宮、介良)に現在も備え付けられている「世帯票」は、同和関係者(属地・属人)を把握するための名簿であり、「高知市版壬申戸籍(※)」であるとして、直ちに廃棄すべきだという質問が9月18日の高知市議会本会議で行われました。質問したのは日本共産党の下元博司市議。
市は「世帯票」を保有持する理由として以下にように述べています。「国の隣保館設置運営要綱に、市民会館が実施すべき基本事業に相談事業があり、『世帯票』は地域住民の生活実態や相談内容を記載する基本的な資料」(3月市議会で西森孝・前市民生活部長の答弁)。
下元市議が、9月18日の質問で過去3年間に11市民会館が受けた相談件数と、その内容を世帯票に書き加えた件数について正したところ、以下のような回答がありました。
「相談件数はおよそ17000件だが、世帯票に内容を書き加えたものはない(吉田充・市民生活部長)」。相談活動の基本的資料といいながら、実際にはまったく活用されていないという矛盾した実態が明らかになりました。
実際に市民会館の職員に話を聞いても「世帯票?一度も見たことがない」、「どこにあるかも知らない」という反応が返ってくるなど、死蔵化しています。
■運営要綱に記載なし
質問で下元市議は、旧同和地区で「属人」とされている市民が自ら情報公開請求して開示された「世帯票」の写しを示しながら、昭和40年代以降ずっと記載がなく、家族構成も現実とはまったく異なるなど、「世帯票」が実態とまったく乖離している事実を指摘。吉田部長は「隣保館運営要綱により設置が義務付けられている必要な行政資料で、壬申戸籍のようなものではない。ただ様式や内容にそぐわない点もあるので、様式や活用にあり方について変更を検討する」と述べました。
そこで本当に「世帯票」は設置が義務づけられているのか厚生労働省に問いあわせてみましたが、同省地域福祉課は「国の隣保館運営要綱には『世帯票』というものはない。相談事業に必要な書類を置くようにという項目はあるが、具体的にどんな書類を置くかは市町村の判断に任される」との回答がありました。
■「元になるもの」
様式の「見直し」について市同和・人権啓発課の上野昇一課長は取材に答え「様式を見直すにしても、やはり『属人』を把握できるものになる。部落差別が根強い中で、(誰が属人なのかを識別するための)元になるものが必要だ」と述べました。
取材の中では、個人の旧身分を行政が勝手に特定して、書き込むことは許されないのではないかと問いましたが、「現実にはまだ部落差別があり記載は必要」という認識とは平行線のままでした。
厚労省の回答にあったように「世帯票」は国が設置を義務づけているものではなく、まして、その中に同和関係者であるかどうかを識別する記述をするなどということは人権侵害そのもの。実態は「壬申戸籍」に他ならず、高知市同和行政の後進性の象徴であるといえます。一刻も早く「高知市版壬申戸籍」である「世帯票」は廃棄しなければなりません。
※明治時代に作られた戸籍。「新平民」など旧身分についての記載があり、身元調べに使われていたことから、1960年代に部落解放同盟が閲覧禁止闘争を展開して法務省に閲覧を中止させた。(2007年9月30日高知民報)
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