2006年12月19日

漁業信用基金協会出資金問題 百条委権限を産経委に付与 政治的思惑先行 12月県議会

賛成多数で産経委への百条権限付与を議決した12月19日の県議会本会議
12月19日に閉会した県議会12月定例会は、自民、公明、県民クラブ、県政会、新21県政会(二神正三氏を除く)の賛成多数で、県が12年から18年度まで県漁業信用基金協会に年間900万円を出資してきた(18年度は未執行)問題を調査するため、産業経済委員会(中西哲委員長)に地方自治法百条の権限を付与することを議決しました。

百条委は、証人尋問を正当な理由なくして断ることができないこと、偽証への罰則など、強い権限を有し、地方議会に与えられた「伝家の宝刀」といえます。「伝家の宝刀」を抜くからには議会側にふさわしい責任が求められることは当然ですが、実態は調査目的もはっきりせず、難癖の域をでない、政治的思惑が先行したものです。

自民党の森田英二議員は、百条権限付与を求めた動議の提案理由で、出資金を違法・不当とした監査委員報告を引きながら、年900万円の出資金の予算見積時に間違った金額が使われていたことを「疑惑を隠す偽装だ」と主張。これまでの産経委の調査で話を聞けていなかった人物を呼ぶために百条委の設置を求めました。

しかし、森田議員が「疑惑」の根拠付けに用いた監査報告は、野村俊夫・元海洋局長が言う疑惑の核心である「組織決定」を否定しています。つまり今後、いくら当時の担当者を呼んで野村氏の描く「スキーム」の一部を証明できたとしても、野村次長以下が当時の歪んだ同和行政に引きずられ背任的ともいえる「よこはま水産」支援に突っ走ろうとしていたことに橋本大二郎県知事がストップをかけたという構図にはいささかも変化はありません(11年当時は「解同」追随の同和行政が続いていた時期であり、現場で不正常なことをやっていても全く不思議ではない)。

また県海洋局が間違ったという見積もり金額については、900万円を7年間出資することで12年度の予算査定を通過したため、その後内容に真剣な検討が加えられていなかったというのが実態に近いのではないかと思われます。海洋局になぜ数字を間違えることになったのかの経緯を充分説明させることは当然ですが、海洋局は「12年度の予算査定時に、新方式の計算式は知りようがなく、水産庁から通達がきたのも12年に入ってからだった」ことを明らかにしていますし、そもそも、年々基金の「底が抜けて」減少している中で、自民党や一部報道が言うように「偽装」などしなくても、実績で計算すれば3億6000万円の融資に対応する目標に向けた出資の説明はできるわけで、わざわざリスクを侵して隠蔽工作する理由は乏しいものです。

監査委員報告は基金協会への出資そのものに公益性がないと断じたわけであり、百条委が調査するのであれば、基金協会の公益性についてでなければ辻褄が合いませんが、12年、13年当時の海洋局長の尋問は行わないままで再度野村俊夫・元海洋局次長には出頭要請を内定するなど、恣意的ともいえる運営が行われようとしています。 今回の百条委権限付与にかかる費用は250万円ですが、貴重な県費を浪費しなくても、通常の産経委の審議の中で基金協会の公益性について解明することは充分可能なはずです。

この動議に対し日本共産党と緑心会の吉良富彦議員が反対討論を行いました(賛成討論は県民クラブの浜田嘉彦議員)。動議の議決を受けて橋本大二郎県知事は、「県としてしっかり説明をしていくことは言うまでもないが、県民生活が厳しい状態に置かれている時に、このような後ろ向きの話ばかりをすることが県民のためになるとは思えない」とコメントしました。産経委は2006年12月26日に委員会を開き、2007年1月23、24日に11年当時の水産振興課補佐、水産振興課長などの証人尋問を行うことを予定しています。