2006年12月19日

高知県漁業信用基金協会への出資金問題の調査に関する動議への吉良議員の反対討論                           

吉良富彦議員
私は、ただいま議題となりました議発第14号、高知県漁業信用基金協会への出資金問題およびそれに関連する事項を調査するため地方自治法第100条第1項の権限を産業経済委員会に委任する動議に反対する立場で討論を行います。

いわゆる100条調査権はその第3項に「6箇月以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する」との刑罰を課すことが明記されていることからわかるように、 100条第一項の権限を持つ委員会の設置は、県議会にとって極めて重要な責任が問われる決定です。ゆえに、通常の委員会において十分実効を収められない点を補完するための時のみに限定される、強制権発動なのであり、その設置は極めて慎重に行われるべきものです。

それでは、本動議案が調査する事項が、通常の委員会で実効を収められないと判断される事案なのか、それは完全に否であります。

そもそも、本事案は、委任するとしている産業経済委員会において、この4月に自民党の土森正典委員が、12年度から18年度まで県が県信用漁業基金協会に出資した年間900万円は、11年5月に、当時の部落解放同盟県連副委員長の村越久佐夫氏が社長の旧佐賀町「よこはま水産」に対し、県信用漁業協同組合連合会が融資した5000万円の見返りとして県が組織決定した「闇保証」である、という疑惑の構図を提起したことに端を発しています。

当該委員会はその指摘を解明すべく、この9月議会まで鋭意調査、審議を尽くし、結果、11年5月17日に「解同との関係など、今までの経過もあるが、今後のよこはま水産に対する対応については企業におけるビジネスの話として処理していく」との知事の言質や、12年2月10日の12年度予算知事査定の場でも「見返り出資」ではないと明確にされている事実が確認され、疑惑の構図の存在は認められませんでした。

さらに、平成12年から18年度まで県漁業信用基金協会への年900万円の県の出資は「出資目的に虚偽があり違法不当な支出である」として出資金の返還・差し止めを求めた住民監査請求を受け、県監査委員が12月8日に発表した監査結果でも、監査の請求目的であった「組織決定による闇保証の見返り出資」という疑惑の構図は、「知事査定の場で野村海洋局次長が主張する見返りの出資ということが認められていない以上、出資金の支出の原因行為とは認められず、違法と解すべき事例ではなく、違法を論ずる余地はないというべきである」と、明快に否定されるに至ったのであります。

ここにおいて残された課題は何か、それは、監査報告が明確に「したがって、公金の支出そのものが違法、不当であったかを判断する」と述べているように、出資の公益性の適否だけとなったのであります。かかるこの問題は、250万円もの経費をかけ100条権限を付与しなくとも、通常の委員会の調査で解明可能な課題であり、到底、100条の委員会の調査対象とはなりえないものであります。

わが党は、部落解放同盟の意向に沿う不公正、乱脈な県の同和行政を唯一、一貫して厳しく批判し、よこはま水産の加工施設が、部落解放同盟の行政闘争の圧力に屈し21億円もの膨大な公金で設立され、その後も、次々と乱発される念書による融資などで癒着がさらに深まっていく事態を具体的に指摘し、13年の集中審議へと向かわせ、原因となっていた同和行政の大転換を図らせてきたのであります。

今問われている問題、それは議会として何を解明するのか、またどうすれば県民に責任を持った対応ができるのかということです。一連の事の経過を今、改めてしっかりとたどり踏まえた上での責任ある対応が、今、議会に求められているのであります。地方自治法の権威者である中島正郎氏は、その著書である「地方議会・百条調査の実務」において「徹底的に眼いっぱい時間と経費をかけてやるのが法の言う100条調査ではなく、100条調査の利益と県民の大多数が見ている利益を比較衡量し、一方的かつ政治的ねらいに乗ずる対応はするべきではない」旨述べています。

県民に透明な県政を実現するために、出資の公益性の徹底した解明が必要とされており、そのことこそが監査報告書を踏まえた対応であることは論を待ちません。だからこそ、そのためにも議会としての手順をしっかり踏まえた取り組みを全議員が一致して行うべきであり、いやしくも、その政治的な利用で目的がゆがめられるようなことがあってはなりません。

私は、ただいま決定されようとしている100条の権限を付与した委員会設置は、解明しようとする事項の内容と経過から言って、その設置自体必要はなく、まず当該常任委員会において、その執行に至る経緯や当時の担当者の調査を初め、必要な資料収集や論理構成などしっかり行い、県民に責任ある説明を先ずすべきであると考えるものです。
 よって、直ちに100条の権限を付与する問題については反対するものであり、この際議会としての経過を踏まえた議員諸氏の賢明な判断・賛同を求め、私の討論といたします。 ありがとうございました。