日高村産廃計画が新局面へ プラント移転補償などに課題も
産廃予定地に残されたプラント
橋本県政の最大の懸案事項、長期にわたり県政と日高村を混乱させてきた日高村への産廃施設「エコサイクルセンター」建設計画が、10月4日の県議会文化厚生委員会で縮小案を最大会派の自民党が容認する姿勢を打ち出したことにより、新しい局面に入りました。その一方で具体的に建設をすすめていく過程にはまだハードルがあることから、今後の動きを注視しておく必要があります。10月6日の高知市議会では自民党市議団提出の(自民党市議団は計画に強硬に反対)、エコサイクルセンター計画の凍結決議が、賛成少数で否決された(賛成は自民、共産、無所属)こともあわせ、10月末から11月上旬に開かれる予定の財団法人エコサイクル高知の理事会(設置主体、県・市町村・業界などで構成。事務局は県)で、これまでの計画から(別表参照)焼却炉と破砕選別施設を除いた「縮小案」(事業費は70億円から48億円に減少)が正式に決定され、事実上ストップしていた建設への動きが再開する見通しです。「縮小案」の実現にむけて残っている課題について検討します。
■事業推進への課題
@用地購入費 これから問題化する可能性があるのは用地の買収問題。「縮小案」では用地関係費用として14億円を計上。内訳は土地にあてる費用が2億円、予定地が急斜面上にあるため造成費や取付道路の建設費用として12億円をみこんでいます。土地そのものの価格は総額で数千万円(坪単価は数百円程度と思われる)であり、土地代2億円の大半は補償費ということになります。
では何を補償するのか。購入を予定している用地は製鉄用添加材として蛇紋岩を採掘していた東邦オリビン工業(本社・東京都中央区)の所有する採石場跡ですが、名目上は休業中ということになっています(実際には廃業)。現場には切り出した石をダンプカーに積むための巨大なプラントが廃墟化して残されており、このプラント移転のための補償金が土地代の相当部分を占める可能性があります。
土地代2億円の内訳について、県エコプロジェクト推進課は「まったく未定。ルールに乗っ取って処理するだけ」とくり返しますが、巨大な廃墟に高額の移転補償をするようなことが果たして許されるのでしょうか。他にも四国電力の設備の移転費用、蛇紋岩の採石権についての地権者への補償というような問題もあります。いずれにせよ費用の大部分を負担するのは県と市町村であり、旧柱谷地区から急転直下決定した用地だけに不利な条件で契約させられることのないよう注視する必要があります。
A「振興策」の削減 事業費の総額48億円よりも大きくなった総額61億円にのぼる日高村への「振興策」ですが、縮小案を自民党が容認した前提には、振興策を削減することがあります。しかし村と県との話はこれからであり、振興策をどこまで削るのかが焦点に。1日数台の車両のために17億円を投入する高架橋計画については、県幹部からも疑問の声が聞こえるほどで、高知市議会にも強い反発があります。
2003年に日高村で産廃の可否を問う住民投票を実施し(賛成が多数になった)時の事業費は約80億円でした。この事業費が4割減の48億円へと減少したわけですから、常識的に考えれば61億円の振興策は4割減の36億円というのが基準と考えられ、着工済みの21億円をかけた県道や、過去の経過から絶対に外せない柱谷地区へ投入する計画の約2億円を除くと、残りは13億円程度ということになります。
B採算問題 施設へ廃棄物を搬入予定している業者はあいかわらず一部に偏っており、安い民間に廃棄物が流れた時に運営赤字に陥るリスクは縮小案でも変わっていません。
C資金調達 民間、高知市以外の市町村の負担額はほとんど煮詰まっていません。
日高村産廃計画の変遷
1993年 中内県政時代に日高村柱谷に用地を決定
1994年 財団法人エコサイクル高知設立 管理型41万立米、安定型47万立米、焼却炉を予定。事業費137億円
2000年 柱谷地区の上流域に安定型を除外した計画へ変更。管理型20万立米と焼却炉、事業費130億円
2002年 前出の上流域案から焼却炉を除く。事業費90億円
2002年 隣接地・本村の採石場跡へ計画地を変更。管理型11万立米、焼却炉。事業費80億円
2004年 前出の隣接地で焼却炉の規模を縮小する案に変更。事業費は70億円
2005年 今回の管理型のみの縮小案へ。事業費48億円