2005年7月31日


これでいいのか巨額「振興策」 61億円を産廃“迷惑料”として日高村へ投入


日高村本村地区に予定されている産業廃棄物処理施設「エコサイクルセンター」(県や市町村、民間団体でつくる財団法人・エコサイクル高知が建設・運営)の建設にともなう「迷惑料」である「エコサイクルセンター設置にともなう日高村振興策」(以下「振興策」)として、総額61億円にものぼる事業がはじまろうとしていることをご存じでしょうか。産廃施設の「迷惑料」とどう関係があるのか説明のつかなない全村ケーブルテレビ敷設や豪華な「道の駅」整備など膨大な事業計画に、県庁内や他市町村から「住民サービスをカットせざるを得ない時に、こんな県費の使い方は説明がつかない」という批判が強くでています。
 
■「13プラス1」

予定されている「振興策」は13事業プラス1(表参照)。総事業費は約61億円、内訳は国費約27億円、県費投入予定が約30億円。「エコサイクル高知」の負担が約3・5億円などとなっており、基本的に村の負担はありません。県費負担分には通常の事業であれば村が払うべきものを県が肩代わりしているのが特徴で、肩代わり分としては約11億円が見込まれています。

県は「三位一体の改革」による深刻な財政難の中で、すべての事業を見直しているはずですが、エコサイクルセンター関係だけは別格で、「村との約束は果たさなければならない」の一点張り。

そもそも産業廃棄物の処理は排出者が責任をもって行うべきもので、産廃施設の事業費(約70億円)に加え、なぜ「振興策」まで排出者負担ではなく、30億円も県費を注ぎ込まなければならないのでしょうか。税金の使い方として完全に公平性を欠いています。

現在、エコサイクルセンターの運営赤字に高知市が難色を示し、計画が一時ストップしていますが、9月には高知市が対応方針を明確にすることになっています。ここでゴーサインが出た場合、「振興策」もセットでスタートするにもかかわらず、県は「振興策」の全容を明らかにしてきておらず、エコサイクル高知の理事会や県議会、高知市議会でも、まともな議論がされてきていないのが現状です。

■疑問だらけCATV

個々の「振興策」をみると多くの問題を抱えていますが、中でも目玉のケーブルテレビ(CATV)整備は疑問点がいくつもあります。

1、予算  県が国からの補助金として2・3億円を使おうと当て込んでいるのは総務省「新世代地域ケーブルテレビ施設整備補助金」ですが、17年度予算は国全体で約18億円(ここ数年は補正もない)にすぎず、全国から申し込みが相次いでおり、後発の日高村が思うように補助金を取れる可能性は極めて低いといえます。補助金そのものが廃止される動きもあります。

2、運営主体は? 運良く補助金が取れてCATVが敷設されたとしても、それからが大変です。市街地だけならともかく全村に敷設されたCATVで採算をとることは困難であり、運営を委託できる民間会社はまずありません。運営主体は村直営か、村主導で作る第3セクター会社が、近隣の民間会社から番組を購入して流す方式になると思われますが、いずれにせよ多額の村費と人材を投入し続ける覚悟が必要。月々の利用料の徴収事務や、施設の管理もしなければならず、10年後には数億円の更新費用が必要になります。

3、負担への認識 契約時に民間なら数万円かかる各戸の宅内工事費や加入金、毎月数千円の利用料、さらにブロードバンドのインターネットを使うには別途数万円の工事費と月5000円程度の利用料などが必要になりますが、この負担方法は運営主体がどうなるかによって決まります。 

村営で全員加入にする場合は、村が肩代わりして個人負担を低く抑えなければならず、多額の村負担が生じます。また民間会社並に個人負担を取れば、大半の住民が加入しないというジレンマに陥ることに。

 「日高村は県が作ってくれるので、何とかなると思っているようだが、かなりの覚悟がなければ運営は絶対に無理」(ある市のCATV担当者)。CATV事業は一度始めると後戻りは困難であり、下手に手を出すと身動きがとれず大変なことになります。後々の負担とリスクについて村民的な議論がないままでは先行きが思いやられます。