2005年12月27日

春野町違法墓地問題 地縁墓地化急ぐ氏原町長に利用者から強い反発
53人が参加した説明会(あじさい会館)
町営墓地あるいは地縁団体による共同墓地として整理することが迫られている春野町の秋山地区の無許可墓地問題を利用者に説明するための町主催の説明会が12月17日に同町内で開かれ、該当する墓地163区画の利用者のうち53人が参加しました。説明会の席上「地縁による団体の墓地」の方向に強引に誘導しようとする氏原嗣志町長の姿勢に会場から反発が出され、激しいやりとりが交わされました。

説明会の冒頭、町はこれまで取り組んできた利用者への聞き取り調査結果を説明。「墓地の所有について91・4%が買い取ったと回答しており、所有権を取得しているという認識が利用者の多数」との報告を行い、町長が「現在の状況、聞き取りの結果を踏まえると町営墓地として整理するのは至難の業。町営墓地は選択すべきではない。地縁墓地の方向性に賛同してほしい」と迫りました。また会場からの「町が急ぐのは高知市との合併に間に合わせるためだ」との指摘に対して町長は「合併しても、しなくても解決しなければならない」と合併とのかかわりを否定しました。

町が地縁墓地化の「根拠」にしている聞き取り調査とは、「墓地の権利を買い取ったと聞いているがよろしいですか」と利用者に一方的に問いかけるものであり、買ったのが底地の所有権なのか、墓地として一般的な永代使用の地上権であるのかは明確ではありません。にもかかわらず町側は所有権を購入したという方向へ誘導し、「所有権は個人→町営墓地にはできない→地縁墓地に」という論法で押し切ろうとしています。この背景には、町長は否定するものの高知市との合併の前提にされている2006年3月末までに墓地問題解決のメドをたてなければならないというタイムリミットがあります。

参加者の発言では「自分の土地として買った。自己責任で管理すべき」と町長に近い住民から地縁墓地化を支持する声もありましたが、「買ったのは永代使用料という地上権であり町営墓地だ」、「今日は初めての会なのになぜそれほど急ぐのか。じっくり議論すべき」、「利用者は墓地について詳しくない。説明を聞いてどれだけの人が分かっているのか。将来の管理のための費用や追加負担、30年前に払った金の使途などはっきりさせてから判断すべきで、そうしなければ禍根を残す」などの意見が相次ぎました。

このような意見が交錯したにも関わらず、氏原町長が会のまとめに「地縁墓地で整理する方向に多くの賛同をいただいた」と集約しようとしたことに、会場から「採決もとっていないのにどうして多いと言えるのか」とたしなめられ撤回するなど、終始氏原町長の強引な姿勢が目立ちました。

地縁墓地 利用者が自ら組合を作り役員を決め費用を徴収して墓地を管理していく形態。氏原町長は地縁墓地であれば追加負担がなく、町営墓地なら改めて永代使用料を納めなければならないので「負担がない地縁墓地を」と強調しました。しかし実際には秋山墓地は造成してから30年が経過して造成地の陥没や崩壊が目立ち、地縁墓地になった場合には共用部分の管理補修費用を地域に残るものが将来にわたり負担しなければならなくなるという不安が利用者に強くあります。「タダより高いものはない」という声も説明会では出ました。町営墓地であれば共用部分の管理は町の責任で行われます。

町営墓地にする場合の新たな永代使用料負担については、利用者は30年前に「町営墓地の永代使用料」として1区画13万円を支払っていることから、「町には納められていないので新たな負担を」と2重払いを求められてもにわかに納得できるものではないでしょう。30年前に集められた資金の使途の解明を含め、利用者が納得できる解決方法を探るためにじっくり時間をかけて話し合う必要があり、「とにかく地縁墓地へ」と拙速に流しこむ町の姿勢は問題の解決をさらに困難にするものでしかありません。