2005年11月27日


どうなる春野町違法墓地 町は町営から地縁団体へ方針転換 利用者「町営だから金払ったのに・・・」

  昭和50年に議決された内容 

高知市と春野町の合併の課題となっている同町内の無許可墓地を「解決」するため、町が取り組みを急いでいます。氏原嗣志・春野町長は問題が発覚した直後は町営墓地として整理するのが経過として望ましいと述べていましたが、ここにきて一転地縁団体で整理する方向に実質的に転換。しかし経過をみると地縁団体にまとめ上げるには無理があります。なぜ氏原町長は地縁団体にこだわるのでしょうか。

今回の解決が求められている同町内の違法墓地は8カ所。焦点は雨森広志元自民党県議の地元秋山地区の「上秋山墓地」(種間寺裏、163区画)、「下秋山墓地」(大谷、138区画)です。両墓地は法に定められた墓地埋葬の許可を得ず、図面や台帳、使用料規定など何もない完全な違法状態。違法墓地は実際には珍しくありませんが、両秋山墓地の特異性は、町営墓地を作るという議案の議決を経て作られた経緯があることです。

町営墓地の議決

発端は昭和50年7月2日。町議会に中山昭町長が提案した「春野町営の墓地を設置する」という議案。提案理由は「秋山地区は墓地狭小のため現有墓地ではもはや飽和状態となっているので地域住民の福祉の見地から設置するもの」とされています。議会の討議では町営墓地を秋山住民に独占的に使用させることへの異論が出たものの賛成多数で可決しました。

その後、法に定められた墓地の許可をとらないまま造成工事が行われ、墓地として使用がはじまりました。この時期を前後して底地の所有権が町に移転されています。その後、約30年間にわたり町は必要な手続きをとらず違法状態のまま今日に至っています。

代金を払った利用者は、町営墓地であるので墓碑を統一するよう指示されたり、共同の水道は町が管理するという話を聞いて13万円を支払っています。経過をみれば町営墓地として整理するのが当然です。

マニュアルで誘導

にもかかわらず、町は一転して地縁団体として整理する方向へ方針を転換。町環境下水道課は「利用者の意識を調査しているが、特定の方向への誘導はしていない」と否定しますが、町が作成したという利用者への聞き取りマニュアルでは、「買い取ったと聞いているがよろしいですか」と確認するように県市町村合併支援室の支援を受けて職員に徹底。利用者からは「買い取った」と強調することで個人の所有であり町営ではないということへ誘導するものだという反発が起きています。

   春野町秋山の違法墓地


町が町営墓地という形を忌避する最大の原因は、墓地造成時に集めた代金の使途の不明朗さ。代金の13万円を受け取ったのは不可解なことに墓地とは関係のない秋山園芸農協(当時の代表者は雨森広志氏、現在は存在せず)。合計で4000万円近い資金が動いた計算になりますが、収支報告はなく、誰がどのように使い、残金がどうなっているのかは皆目分かりません。流用されているのではないかという噂も町民の中でささやかれています。町営墓地を舞台に不正があったとなればただで済まないことから、どうしてもこの際、町から切り離そうというのが狙いだと思われます。

    当時代金を受け取ったのは秋山園芸農協だった

しかし利用者にとっては地縁団体化は大きなデメリットがあります。町営墓地なら将来の維持管理は町の責任で行われますが、地縁団体の場合には、利用者自らが管理するため法人を作り、自費で管理しなければなりません。墓の管理は長期にわたり、遺族が町内に居住しない場合も多いことから、利用者には不安が高まり「町営墓地ということで金を払った。今更地縁団体というのはおかしい」という声があがっています。

春野町が無理を承知で地縁団体を急ぐ背景には、18年11月(現町議の任期中)までに合併のための議決をあげなければならないという氏原町長の意向がありますが、利用者が納得できる公正な解決と実態解明をはからなければ、将来に大きな禍根を残すことになりかねません。