2005年7月30日


「特定業者」に牛耳られた弘化台市場 クレームでたびたび工事停止 


6月高知市議会で岡田泰司高知市議が高知市中央卸売市場(高知市弘化台)が「特定業者A」に塗装工事を取らせるため違法な分割発注をしていたことを指摘した質問にはじまり、市役所内の不公正な発注の実態解明をすすめている「不適正発注等に関する調査特別委」は7月27日、問題の発端となった市場課のM市場長から事情聴取を行いました。審議の中で、市場の中でA業者の存在は非常に大きく特別な存在であることが明らかになり、市場課はたびたびAに因縁をつけられ、Aが了解しなければ市場全体の改修工事を進めることができないなど、Aの「権勢」の実態の一部が判明しました。Aはこの「権勢」をバックに平成12年度から16年度までに市場内の塗装工事約1222万円を受注。これは同時期の塗装工事全体約1590万円の77%にもあたり、Aが市場を牛耳り、異様な癒着ぶりが示されています。

市場を足がかりに

出入りの一業者でしかないAがなぜ、「権勢」をふるって市役所を闊歩し、市役所全庁から特権的に工事を受注できるようになったのでしょうか。そのルーツは市場にありました。

特別委の聴取に答え、現在の市場の責任者であるM市場長は「Aの市場での存在は非常に大きい」と述べました。 Aの配偶者が市内の水産関係会社関係者で、市場内に店舗を構えていたことから、Aはたびたび市場に出入りし、「地元」として市場の運営や全体の改修工事の進め方などについて市場課と交渉し、密接な関係を持つようになっていきます。

Aの切り札は工期が迫っている工事をストップさせること。ささいなことで因縁をつけては「工事をとめろ」と市場長に迫り、市場長はこれを受け入れ、Aが納得しないかぎり、工事を再開することができないという関係がつくられていきます。 M市場長の発言からは「工期に影響すると非常に困る。クレームを付けられると話し合いに応じなければならず、解決に手間どる」と、いつ因縁をつけられるのかビクビクしていた様子が伝わってきました。

このような状況の中で、A本人が市場内を詳しく見てまわり、「ここの工事をやりたい」と修繕工事の「営業」を提起。市場長は提起に応えて仕事を発注し、金額が大きい場合には入札を回避して確実にAに仕事を取らせるため、随意契約が可能になる少額に工事を偽装分割することがくり返されました。

M市場長は、絶対「圧力があった」とは発言しませんでしたが、工期を「人質」にとられ、Aに睨まれたら仕事ができない関係が、A業者への異常な発注率の高さの背景にあることは確実。17年5月にはM市場長が、処分覚悟であえて違法な分割発注をしてAに総額260万円ほどの仕事を取らせていますが、市場長がここまでするのはAが猛烈にねじ込んでストップさせていた「活魚水槽移転工事」を再開させてもらうための「見返り」としか考えられません。

もうひとつ忘れてならないのが平成10年6月30日にAが起こした暴力事件です。新しい宇賀清掃工場建設時の説明会でのトラブルで市担当幹部に暴行をはたらき、9月14日に公務執行妨害で告発(不起訴)される事件がありました。事件後、急速に市役所内でAの影響力が増していきます。当時は松尾市政が別の「特定市民」との関わりを指摘されていたころでしたが、水面下では新たな癒着が培養されていたのでした。

■毅然と対応した15年度

市場課のA業者への発注状況
平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年
修繕5件  小規模工事1件 
修繕9件
小規模工事2件 なし 修繕1件 小規模工事1件
修繕3件

15年度はAへの発注がピタリと止まっているのが目立ちます。何故でしょうか。15年度に12〜14年度のN市場長から交替したH市場長は、Aに屈服することに抵抗。Aと「業者の立場をわきまえるべきだ」とやりあうなど、毅然とした態度を貫きました。AはH市場長に「営業」をかけても無駄と思ったのか、15年度はまったく「営業」をかけなかったことから、市場の塗装工事は発生しましせんでした。

しかし、H場長は就任からわずか1年で異例の異動させられてしまいます(16〜17年度は現M市場長)。しかも副部長級の市場長から課長級への実質的な降格。この人事を知った市役所関係者は、Aは幹部人事にまで影響力を持つのかと震え上がり、「物言えば唇寒し」という雰囲気が蔓延していったことは想像に難くありません。



M市場長の発言から(7月27日特別委員会)

(Aから不当な圧力はなかったのか)

M市場長 微妙なものがある。不当な圧力とは感じなかったが、無理と思う要求を受けたことはある。ただ無理な要求は市役所勤務の中で、何度かあったわけだが、自分は相手に分かってもらうために説得しなければならないとまず考え行動してきた。彼から受けた無理な要求についても、不当な圧力とは感じず、とにかく何とか説得しなければならないと考えた。

無理な要求と感じたことは2回ある。市場内のプロパン庫の修繕をしている時に、工事をやめろと言ってきた時(2004年8月)。この時のAの主張は、市場内の工事は午後1時からと決まっているのに、それを守っていないということと、工事関係者の通勤車は市場内の駐車場にとめないことになっているのに、とめているということだった。市場課の職員に聞くと、確かにそういった指導をしているとのことだったので、彼の主張にも一定の言い分はあると考えたが、指摘を受けた業者は、すぐ指導に従ったので、何日も工事を中断するまでのことかいえば、それは無理な要求と感じた。最終的には1週間程度の中断の後に、彼も納得のうえ工事を再開した。

もう一回は旧活魚水漕の解体撤去の時。Aから作業をする業者は過去に問題を起こしているのに、なんでやらせるのかと抗議を受けた。その工事は市場課が直接業者に発注するのではなく、市と活魚水槽の所有者である卸売会社とで移転補償契約を結び、卸売り会社が発注したもの。彼は青果や塩干の時は市の発注で冷蔵庫などを解体したではないか、不公平だと言う主張をした。最初は彼を説得するのにそんなに時間がかかるとは思わなかったが、これに手間取り、途中からは当時の担当部長に対しても、市場課発注の工事のミスなどをならべて、抗議をするようになった。これらの内容についてもなかなか理解が得られずに、非常に困ったことがあった。その後17年5月に塗装工事を実施した(Aの営業を受けて)が、17年3月にはすでにAの理解を得ていたので、活魚水槽解体と引き替えに塗装工事を実施させろといった話はなかった。

(なぜ無理な分割発注をしたのか)

以前Aのクレームで工事が止まったことがある。現在やっている市場の改修工事は工期にきびしいものがあるので、彼とトラブルを起こしてはならないという気持ちが心の中にあったことは間違いない。トラブルを起こしてクレームをつけられては困るという思いがあった。

(違法な分割発注に対して課内から異論は出なかったのか)

5月に分割発注を規則違反であると知りながら発注を指示したのは自分。活魚漕の時に(クレームをつけられ)、(M市場長自身が)かなり困っていたのを見て、担当者は気を遣って指摘できなかったのではないか。