2004年1月16日 高知民報


県議会百条委 笠誠一氏が自書メモの根底を否定 これまでの証言覆す ホテル拠点に「天の声」画策


         1月15日の県議会百条委員会

自民党県議団が橋本大二郎県知事へのダメージを狙い仕掛けた「選挙資金疑惑」を調査している「県議会・坂本ダム等に関する調査特別委員会(百条委員会)」が15日に開かれ、橋本氏の1期目の選挙に関わった笠誠一氏(81)、「ホテル佐渡」(高知市大川筋)社長の秋山武子氏(72)を証人尋問しました。尋問で笠氏はこれまでの自身の主張を根底から覆し、秋山氏の証言では平成3年の知事選直後から笠氏が県内公共事業の「天の声」になるべく画策していた実態が明らかになりました。「裏金」の授受や返済について橋本知事が知っていたことを裏付ける証言は出ませんでした。

■証言が二転三転

これまで笠氏は平成6年(坂本ダムの工事の契約後)に熊谷組・新進建設からダム工事受注の見返りとして1億円を調達し、町田照代氏から借りた1億円を返済したと主張してきましたが、この時期は橋本知事の初当選直後の平成4年1月から3月の間違いだったと時期を2年も変更。これまでの笠氏の証言やメモが、「橋本四選阻止」という政治的な思惑の先行した、いい加減なものであったことが明らかになりました。

笠氏の証言には、和住工業・横矢忠志社長の証言と食い違う部分も依然として多く残されており、日本共産党と緑心会の田頭文吾郎議員は「証言するたびに主張が変わり信用できない」と指摘しました。

これまで笠氏は裏帳簿を選挙事務所の前で焼いたと述べていましたが、焼いたとされる時期には選挙事務所はすでに壊されて存在しなかったことが指摘されていました。

今回の証言では、「裏帳簿ではなく、焼いたのは金銭の流れを書いたメモだった。メモを焼いたのは平成3年12月1日で、この時には選挙事務所はあった」と訂正。「当選してからすぐに焼いたのか」という森田英二議員(自民)の質問に対して「はい」と答えました。

しかし12月1日は投票日当日で、まだ当選は決まっていません。訂正したはずの日程に早くも矛盾点が露呈しています。

   笠氏の「事務所」があったホテル佐渡

■「ホテル佐渡」を事務所に

「ホテル佐渡」社長の秋山氏の証言は、笠氏が談合や裏金にかかわっていたことを裏付けるものでした。笠氏は平成3年夏から約4カ月、同ホテルに滞在していながら、料金を支払ったことは一度もなく、会計責任者と3人で道後温泉に旅行したり、尋問前日の1月14日にも笠氏が同ホテルに宿泊するなど、両者が密接な関係にあること、笠氏らは平成3年12月の知事選後の約3カ月間、「ホテル佐渡」の501号室を借り上げて事務所にしており、熊谷組四国支店の営業部長など建設会社の社員が笠氏を「先生」と呼び、「しょっちゅう来ていた」と証言しました。

笠氏は平成4年1月26日に「誠橋会」を新阪急ホテルで立ち上げ、出席した県内外の建設業者を前に「橋本知事の窓口になる会だ」とあいさつ(すぐに知事側の指示で活動停止になる)していましたが、秋山氏の証言により橋本知事の初当選直後から「ホテル佐渡」を拠点に県公共事業を仕切るフィクサーになろうと動いていた様子が浮き彫りになりました。

橋本知事は「(笠氏は)選挙が終わった後も高知に残って、様々な活動をされていました。ただ、その動きを見ているうちに、そのままにしていたら、そこにまた、古い、悪いしがらみができてしまうのではないかという強い危惧を感じました。そこで、早々に高知から東京に戻っていただいた、といった経過がありました」というコメントを発表していますが、秋山氏の証言はこのコメントとも一致します。
 
■1億円めぐる証言の不自然さ

一方、秋山氏は平成3年の知事選挙の中盤、笠氏が熊谷・新進・大旺・戸田・西松・和住の6建設会社から集めたと述べている1億円の包みを、「ホテル佐渡」で預かったと証言しましたが、この証言には矛盾が多くあります。

秋山氏は預かった1億円を「金とは知らずに預かり、鍵のかからないロッカーに入れてあった」、「2日後、選挙事務所の事務員から金を出すように言われ、笠氏から1億円と聞いた。(包んでいた)新聞紙が破けていてチラリと金が見えた。中をみたら全部古い1万円札だった」、「重くて1人では持てず、事務員と2人で1階のロッカーに入れた」、「1億円の札束は新聞紙でひとつにくるんでいた。中は100万円の束。縛っていなかった」などと証言しました。

1億円の大金と知った後も、あいかわらず鍵のかからない1階ロッカーにどうして放置したままなのか。笠氏は高知ホテル(高知駅前)で受け取った1億円は2000万円、1000万円ごとに新聞紙に包まれていて、そのまま風呂敷にくるんで「ホテル佐渡」に持参したと述べているにもかかわらず、秋山氏はバラではなく、新聞紙にくるまれた包みが一つだけだったと断言。両者の主張は食い違っています。

実際には1億円の札束を新聞紙で包むことは困難です。1億円の札束は新札でおよそ40センチ×16センチ×20センチで新聞紙ではサイズが足りません。またバラバラの100万円の束100個を縛らずに新聞で包んだだけで2人がかりで持てるように固定するのは難しいこと、そもそも1億円の重さは約10キログラムで1人で充分持てるなど、多くの矛盾点があります。

次の百条委員会は1月29日。町田照代氏、戸田建設関係者などの尋問を予定しています。


1億円大の模型を新聞紙で包んでみるがまったく寸法が足りない