元木益樹・自民県議(百条委委員長)が国分川右岸土地問題に関与 公正な調査に疑問符 公明党国会議員も
国分川右岸(高知市南久保)の現地
「橋本4選阻止」という政治的思惑による「橋本知事選挙資金疑惑」の契機になった株式会社・和住(横矢忠志社長)による国分川右岸(高知市南久保)の土地問題に、自民党県連幹事長の元木益樹県会議員が関与していることが明らかになりました。元木議員は国分川土地問題を調査解明するため10日に設置された「坂本ダム等に関する調査特別委員会」の委員長を務めています。委員長本人が「当事者」で公正な疑惑解明が果たしてできるのでしょうか。
7月8日、和住・横矢社長が橋本知事を訪ね知事選出馬断念を迫った時に元木県議が仲介。本紙が情報開示請求によって入手した県土木部の資料からは元木県議が、国分川の土地問題に深く関わっていたことを裏付ける記述が数多く見うけられます。
■県土木部の文書から
■(株)和住による国有地の不法埋立事件について
「15年2月21日、元木県議立会の上、和住の主張を聞く」
「15年2月24日 元木県議に国土法の届出文書を渡す。次の質問を受ける。(和住は)交換の話は県から出したと言っているが、どうしてダメなのか。別の方法で和住が池沼を取得する方法はないのか。(中略)埋立によって堤防の補強になるのではないか。堤防が危険だというのは県民にとっては大変な問題である。議会で質問しなければならない」
■国分川右岸堤防(新国分川橋付近右岸)について
日時 平成15年2月26日 場所 自民党控室 「(略)池沼があるために堤体が不安定になっていると心配している。2月議会で質問をしたい。(中略)池沼を埋めたら堤体の強度は増すのか。もし堤防が決壊した時により安全ではないのか」
元木県議は15年2月21日から26日にかけて連続的に議会質問で取り上げることをチラつかせながら、「埋立」により堤防の強度が上がるのではないかとさかんに言っています。元木県議がここで言う「埋立」とはいったい何を指しているのでしょうか。
平成13年6月頃から和住は自社の所有地を大きく南にこえて(約140メートル。図参照)、国有地に大量の土砂を入れ不法占有します。当時の県は口頭で回復を求めただけで事実上黙認のような態度をとっていましたが、平成15年2月17日に和住側が制止を振り切ってさらに強引に土砂を運びこんだことから、県は同日付で和住に不法占有是正を勧告。以後は妥協しない原則的な態度へと転じます。
元木県議の「働きかけ」が強まるのは、県が命令を出した2月17日直後から。「埋立」とは和住が不法占有した場所に他ならず、県の勧告にクレームを付け、不法行為を合理化しようとするニュアンスが強くにじみ出ています。県担当者には「堤防の補強は河川管理者が調査して必要があれば行うべき問題であり、許可の範囲を越えて埋立てている問題とは話が別」と一蹴されていますが、元木県議の関与は、和住の意を受けた政治工作であることは明らか。さらにこの時期から6月頃にかけては、様々な政治家からの圧力がエスカレートします。
6月9日 ●●元衆議院議員が国土交通省四国整備局長に意見書を提出
6月12日 公明党の草川昭三参院議員(党副代表)が「国政調査権に基づき」と称して県に説明を求める
6月20日 ●●前県議が県土木部副部長と会う
県はこのような再三のプレッシャーを跳ね返し、判断が揺らぐことはありませんでした。「万策尽きた」和住は6月22日までに土砂の大半を撤去します(一部の土砂と看板は現在も残っており不法占有が続いている)。このような流れの中で横矢社長は7月3日に笠誠一氏を訪ね、7月8日に橋本知事に4選不出馬を迫り「疑惑」をしかけてきたのです。
経過を見れば元木県議は、まぎれもなく当事者の1人。調査特別委員会の委員長としての適格性に疑義が生じます。元木県議は自ら横矢社長と、この土地問題への関わりの全容を明らかにする責任があるのではないでしょうか。
(資料)国分川土地問題の平成9年以降の主な経過
平成9年5月 | 問題の土地を和住がクミアイ興産から購入 |
10年8月 | 県、川底は買収しないという方針を確定 |
9月 | 98豪雨 |
11年1月 | 県河川課長、用地管理課長が連名で川底を買収する意思を和住側に表明。以後買収のための作業に入る |
12年3月 | 和住から買収には応じない。国有池沼と交換せよとの要求を受ける。 |
12年12月から13年にかけて | 県が国の関係機関になんとか交換できないかと協議に入るが、いずれも拒否される。 |
13年6月 | 和住が国有地の不法占有をはじめる |
14年2月 | 県河川課長が和住に1億8445万円の買収価格を提示 |
3月 | 和住は買収には応じない。地図混乱地域で処理すると主張 |
4月 | 県、顧問弁護士に相談し、買収の必要性なしとのアドバイス |
5月 | 県河川課内で協議し、買収しないという原則的な方針に立ち返る。土木部長に報告 |
6月 | 知事に報告 知事「平成9年以降どういうことがあったとしても、本来あるべき姿に して論議せよ。相手が訴訟に出れば受けて立つ」 |
15年1月 | 和住が不法占有した土地を「この土地は自社の所有地」と主張しだす |
2月 | 県「不法占有是正についての勧告」を出す |
この問題への元木県議の関与強まる | |
6月12日 | 公明党・草川参議院議員が「調査」 |
和住が国有地に「和住の所有地」という看板を立てる | |
6月22日 | 和住、この頃までに土砂の大半を撤去する(一部の土砂と看板は除く) |
7月3日 | 横矢社長が東京の笠誠一氏を訪ねる |
7月8日 | 横矢社長、元木県議の仲介で知事を訪れ、選挙不出馬を迫り「資金メモ」を見せる |
9月28日 | 横矢社長、笠氏、依光隆夫自民県議らが知事と会談し不出馬を求めるが知事は拒否 |
9月30日 | 依光県議が県議会本会議で「選挙資金疑惑」を質問 |
※国分川右岸の土地問題は2006年、訴訟で和住側の主張が退けられ終結。その後、和住側が当該用地を買収し、転売して解決しています。