2002年12月22日 高知民報


橋本知事の女子大学長選挙介入発言の撤回求める 塚地佐智県議                               

 12日に開かれた県議会12月定例会で日本共産党の塚地佐智議員と橋本大二郎県知事との県立女子大学長問題での論戦の要旨を紹介します。

 塚地 知事は学長選凍結、吉野事務代理のもとでの結束を大学側に激しく迫り、現在女子大には学長、副学長が不在、知事の強力な後押しを受けた吉野事務代理が学長職を代行する異様な事態に陥っている。
 この事態を招いた知事の学長選凍結・人事介入は、明白な大学の自治の侵害であり、地元紙が「暴走」と指摘。学生・大学関係者、OBなどに批判が広がり、「知事ってこんな人だったの」と知事を支持してきた人にも驚きの声が出ている。

 県知事 学生が新聞に投書したり署名を集めていることを知り、私の考えとはズレがあるが頼もしく感じた。私なら卒業証書の名前ではなく、「学生の直接選挙で学長を選ばせろ」という運動する。
 学生に不安を与えていることには心を痛めている。年明けには学生と話し合いたい。聡明な学生は、必ず改革への取り組みを理解してくれると信じている。 

 塚地 知事の大学の自治に対する理解は極めて底が浅い。戦後、学問の自由と自治侵害の苦い教訓から学問の自由を基本的人権のひとつとして明記し、教育公務員特例法で大学人事などはすべて大学自身で行うことが成文で定められた。
 大学自治は学問の自由と人事の独立が一体不可分。知事が権力を振りかざして圧力をかけ学長選を凍結に追い込むなどあってはならない。極めて異常な明白な大学自治の蹂躙だ。
 女子大および高知短大の大学長選考規定では、教育公務員特例法に基づき、「学長が辞任を申し出た時」「欠員となったとき」は速やかに選挙を行うと定めている。1年半にもわたって学長選をしないよう求めたことは教特法に違反する。
 誰が見ても大学改革と学長選は別問題。学長選をやるななどと言う権限は知事にはない。このような干渉が前例になれば大学の自治と学問の自由は守れない。知事発言は撤回し、速やかに学長選を実施する状況を作り出すことが必要だ。
 学内自治なくして大学改革はありえない。正当な選挙によらず知事の一方的な押しつけで、大学改革という重大問題の責任者を決めることは、乱暴な干渉そのものである。このような手法で大学改革がすすむと思っているのか。

 県知事 大学の自治は学問と研究の自由を保証するもので権力や行政が侵してはならない。同時に県民の税金でまかなわれている県立大は県民や県の期待に応える責務がある。県立大は県の機関であり、組織や予算は設置者権限に属し、予算は議会の承認が必要なので、大学の自治と言っても決めたことがすべて実現できるわけではない。
 県民のニーズに応えているかという視点で大学に意見を言うのも、設置者の責務なので、直ちに学長選を実施し、対立を生むより、改革の確実な実行が求められるという思いを大学に言った。
 この考えを大学側が一定理解したうえで、当面学長選は行わないと判断した。教育公務員特例法に抵触するものではないし、大学の自治を侵すものでもはない。

 塚地 その認識は全く違う。知事発言は極めて高圧的で、権力的なものだ。自由に物が言えない雰囲気が学内に広がっている。ルールに基づいて学長を選び進んでいくのが当たり前だ。選挙なので結果は分からないが、ルールを無視していいというものではない。

 県知事 自由に発言できない雰囲気があってはならないが、自由の裏側には規律がある。規律とは県民の多額の税金で成り立っていることを充分認識して行動することを問いかけたくて強い表現をした。
 将来の学長選を否定しているわけではない。今は新たな対立の芽を生むより、成田前学長が招き評議会が改革担当に任命した吉野氏のもとで、一致団結して取り組んでいくべきだ。

 塚地 規律というなら学長選をルール通り行うことが大事で、知事の言うことは納得できない。正常な大学をつくることこそ知事がしなくてはならない仕事。新たな対立は知事の押しつけによって生まれている。知事が発言を撤回して正常なルールにもとづく大学運営をしていく環境を整えることが、大学改革推進のうえで一番大事なポイントではないか。

 県知事 私は公務員の労働組合、様々な協同組合、大学教員など従来、手厚く守られたところに、県民の立場で言うべきことを言ってきた。これが、これまでの枠組みに馴れた人から「強権的」「冷たい」と言われているが、私を選んでくれた県民はそのような知事を求めている。「知事ってこんな人だったの」と言っている人もやがて理解してくれる日が来ると確信している。