連載  百条委と知事選の取材メモから
                       2度の選挙で明らかになったものは


F知事選中に横矢忠志和住工業社長が証言


元木益樹委員長と横矢忠志・和住工業社長との関係が取りざたされる中で波乱のスタートとなった百条委と併行して、任期満了にともなう高知県知事選挙が2003年11月13日に告示され(11月30日投票)、橋本大二郎氏と松尾徹人氏が立候補。激烈な選挙戦が始まりました。両候補を支持する陣容は基本的には2004年の知事選と同様、松尾陣営には自民、民主、社民、新社会、連合など(公明は出陣式には出席せず)、橋本陣営は無所属県議、草の根と呼ばれる無党派層らが結集しました(日本共産党は橋本氏を独自の立場で実質支援)。

知事選を有利に運ぶことが最大の狙いである自民党県議団・県民クラブらは、知事選投票前に一連の「疑惑」の核心を知る和住工業の横矢社長に証人尋問して発言の場を与えることを強硬に主張し押し切りました。選挙の真っ最中に「橋本四選阻止」のため「疑惑」を依光隆夫自民党県議・笠誠一氏とともにしかけた張本人に証言させることは選挙の公正さを著しく欠き、百条委の政治利用の最たる物です。

11月21日の百条委では横矢忠志・和住工業社長、池澤禮司・元県土木部副部長、永野博之・元熊谷組四国支店長の証言が行われました。

横矢氏は、国分川右岸土地問題について和住側に有利になる主張を繰り返し、橋本知事への敵意をむき出しにしましたが、かえって要求の不当性と、屈しない橋本知事の姿勢が浮き彫りになりました。選挙資金の問題で横矢社長は「平成3年に1300万円を笠氏に貸した」と笠氏への資金提供を認めましたが、金銭の授受を証明するものはなく橋本知事が資金の流れを承知していたことについても「その辺は分かりません」と明らかにできませんでした。また坂本ダムの談合と和住工業以外の企業からの資金提供についても「知らない」と述べ、疑惑の核心に触れることはありませんでした。

国分川土地問題に県担当者として関わっていた池澤元県土木部副部長に対し、自民党の武石利彦議員が「県が一時期、和住側に有利に動こうとしたのは橋本知事の指示を受けたからではないか」と事態を逆さまに描く質問を執拗に行いましたが、池澤氏は「指示を受けたことはない」と否定しました。

高知市内のホテルに4000万円の「裏金」を運んできたきた人物であると笠氏に証言されている永野元支店長は「笠氏に会ったことはなく、ホテルに行ったこともない。新聞で知って驚いている」と笠証言を全面否定しました。

知事選を有利に展開することを狙い強引に異例の3人の尋問を設定したこの日の委員会でしたが、3人の証言は、これまでの笠氏の証言との食い違いが目立ち、これまで 笠氏が証言してきた「疑惑」の核心が否定される皮肉な結果に。橋本知事にダメージを与える自民党県議団・県民クラブの政治的思惑は空振りに終わりました。こうして11月30日、橋本県政での改革前進か、利権・しがらみ勢力の復活かを県民が選択する知事選挙の投票日を迎えます。(中田宏)

※国分川右岸の土地問題は2006年、訴訟で和住側の主張が退けられ終結。その後、和住側が当該用地を買収し、転売して解決しています。