連載  百条委と知事選の取材メモから
                        2度の知事選挙で明らかになったものは


D知事選めあてに百条委設置を多数でゴリ押し


     賛成多数で百条委を設置(03年10月10日)

笠誠一氏の2回の参考人質疑により、自民党県議団と県民クラブは証言に強制力を持たせる百条委員会の設置へと勢いを増します。狙いは40日後に投票される知事選。百条委を強引に設置して選挙戦で橋本氏にダメージを与えるために他なりません。

衆院が解散され総選挙が決まった2003年10月10日の午前、県議会議会運営委員会で百条委設置の是否が採決されましたが賛否は5対5の同数。当時は自民党に所属していた親知事派の植田壮一郎・議運委員長の賛成でかろうじて設置が決まりました(賛成は自民・県民ク、反対は21県政・共産緑心・公明)。後に自民党を離党し橋本大二郎知事と行動を共にする植田氏にとってこの時、百条委設置に賛成したのは苦渋の決断でした。

同日午後には県議会本会議が開かれ、正式に「坂本ダム等に関する調査特別委員会」が賛成多数で設置されました。賛成は自民・県民ク・公明、反対は21県政会・共産緑心など。公明党は議運委では百条委設置に反対しながら本会議では一転賛成する分かりにくい行動。同党がこのような動き方をするのはしょっちゅうですが、知事選にむけ創価学会・公明党が「反橋本」へとシフトしていることを感じさせるものでした。百条委委員長には横矢社長と数々の関係を持っていた(後日様々な事実が発覚したが当時は明らかになっていなかった)、元木益樹県議・自民党県連幹事長が決まりました。

百条委の設置直後から高知新聞は、橋本知事と笠氏の面会や依光県議との「密会」写真などを暴露し、ますます「疑惑」をあおる役割を果たしていきました。

自民・県民ク・公明が議会の「伝家の宝刀」ともいえる百条委を、目前に迫った知事選に政治利用のためのゴリ押ししたことは議会の権限の乱用であり県議会の歴史に汚点を残したといえます。本会議では日本共産党と緑心会の牧義信議員が百条委設置に反対する討論に立ちました。長くなりますが「日本共産党と緑心会」の立場を明確にする重要な内容が含まれていますので内容を紹介します。

牧義信議員 100条調査特別委員会の設置は、県議会にとって重要な責任を問われる決定。議運の採決は5対5の可否同数、委員長判断で可決という異例なもの。まず一致している110条による調査特別委設置からはじめるべき。依光議員の質問の根拠は笠メモだけ。議運委の笠氏の発言では『何ら物証はない』ことが明言され、『橋本知事の4選阻止』が狙いであることもはっきり語られた。企画建設委の証言でも、新たなメモの存在や勘違いなど、メモそのものの信憑性に関わる疑念が増大している。名指しされた関係者からは、まっこうから反論が出されている。
 事の発端となった国分川河川敷問題には、特定の業者の不当な要求と、対応を誤った当時の県の問題、橋本知事が原則にたった毅然とした対応をしたことへ特定業者の脅しがあり、7月3日の笠氏と業者の出会いで双方の政治的ねらいが一致したことも明らかになった。こうした経過を踏まえた責任ある対応が議会に求められている。いやしくも一方的な政治的狙いに乗ずる対応はすべきでない。

笠氏の証言が事実とすれば、県の公共事業を取り巻く談合体質と建設業界の底知れない利権構造がある。この機に、利権構造や特定業者の不当な働きかけを一掃し透明な県政実現のため、事態の徹底した解明が必要。そのために議会としての手順を踏み、全議員が一致して取り組むべきだ。

100条の付与が万能でないことはヤミ融資の貴重な経験からも明らか。委員会が強い権限をもつのは「関係人が正当な理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しない時」に罰則を設けているからだが、「正当な理由がない」ことを議会の側が立証するだけの明確な根拠がなければ成り立たない。「ヤミ融資」では議会が確かな証拠に基づいて告発までやってようやく局面を変えることができた。それだけの用意がなければ、権限の付与だけで問題が解決しないことは貴重な教訓だ。議運では、自民党委員が「100条にすれば、笠氏の証言も変わるかもしれない」と言ったが、そんな曖昧なもので議会は動いたのか。国分川河川敷に関わる特定業者が「百条委員会でないと証言しない」と言ったようだが、疑惑を真に解明しようというなら、進んで調査特別委員会で証言すべき。「百条ありき」の姿勢は、自身が火付け役であった経過からして、あまりにも意図的、政治的だ。

全会一致で設置した110条調査特別委員会は重要な意味を持つ。まずこの場で、坂本ダム問題の県の内部調査や河川敷問題の当時の担当者の調査をはじめ、足元をしっかり固めることが大前提になる。よってただちに100条の権限を付与することについては反対する。  (中田宏)