連載  百条委と知事選の取材メモから
                        2度の知事選挙で明らかになったものは


C笠メモ判明 笠氏2回目の意見聴取 「裏帳簿」と「ある政党」で矛盾露呈


            企業名の黒塗りが外された笠メモ

これまで企業名が黒塗りされていた「笠メモ」が、2003年10月8日、依光隆夫県議から企業名を明らかにして公開されました。そこに書かれていたのは熊谷組、新進建設、大旺建設、戸田建設、西松建設、和住工業と横矢忠志・和住工業社長でした。

高知新聞はメモの現物を載せず企業名を伏せた記事しか書かなかったことから、笠氏の個人情報以外のメモの現物を掲載した高知民報のホームページにアクセスが急激に増加するようになりました。

大旺建設にメモの内容について取材したところ、「当時の選挙では相手候補を支援しており、金を出すはずがない。自民党は何を考えているのか」。もちろん彼等の「出していない」という言葉をそのまま信用するわけにはいきませんが、自民党と建設業界とのきしみが大きくなっていることを実感させるものでした。

10月9日、笠誠一氏が企画建設委員会で事情聴取に応じました。10月3日の議運委での作務衣姿とはうって変わってさっそうとしたジャケット姿で議場に現れた笠氏ですが、証言には早くも重大なほころびが出はじめます。笠氏は3日の議運委で選挙後、裏帳簿を、橋本知事に公邸で説明した後に知事に指示され選挙事務所の前で焼いたと述べていました。「選挙事務所の、まだ家が残っていましたから、その原っぱのはっきりした記憶っていうのはないけど、原っぱで焼き捨てましたよね。ドラム缶か何かの中へ」。

9日の企画建設委では、橋本氏が知事公邸に引っ越したのが翌年3月末であることから「選挙(3年12月投票)後4カ月も事務所が存在していたのか」と矛盾をつかれしどろもどろに(後日、裏帳簿は存在せずレポート用紙をホテル佐渡で焼いたと証言を変更)。

さらに大きな矛盾は「ある政党」への裏金について。笠氏はこの日の委員会で以下のように述べました。
笠参考人 一番大きく使ったのは、ある政党に選挙資金として渡したのは大きいですよね。
牧義信副委員長(共産緑心) ある政党とはどこか。
笠参考人 いや。それは忘れちゃったですよ。

笠氏は「忘れた」の一点張りですが、「政党に渡した」ことを覚えていて政党名を忘れることはありえません。

笠氏が「ある政党」を隠そうとする背景には当時唯一、橋本氏を推した旧社会党との関係があると考えられます。

「ある政党」への資金の流れは「裏金」の有力な使途の一つであることから後の百条委でも何度も問題になりましたが、笠氏は最後まで「忘れた」で押し通しました。

連合有力労組の幹部は「当時の幹部Sがもらったと聞いたことがある」、公明党からも「どこがもらっていたかは考れば分かる」という声が聞こえる一方、旧社会党の流れをくむ県民クラブはまったく「ある政党」に言及しないなど、誰が見ても真相の想像がつく状態になっていました。

このような笠氏の証言態度は、知事の追い落としに不利になることは、一切口にしないという意図を浮き彫りにするものでした。(中田宏)