連載  百条委と知事選の取材メモから
                        2度の知事選挙で明らかになったものは


B和住・横矢社長と国分川土地問題がクローズアップ

                                                               国有地に不法に立てられた和住の看板

11月28日に投票された知事選挙では橋本大二郎氏が5度目の当選を果たしました。情勢急転のため休止していた連載をタイトルを変更して再開します。

橋本氏の勝利で終わった04年知事選で、クローズアップされたのが「和住工業」の03年知事選への関与。焦点は国分川右岸(高知市南久保)の土地問題でした。

発端は2003年10月3日の県議会予算委にさかのぼります。自民党の武石利彦議員の「資金疑惑」への質問に答え、橋本知事が「笠氏にこの話を持ちかけた高知市内の企業経営者がいる。この人物が7月の初めに来て、高知市に持っている土地の県の判断を覆してほしいと言った。それはできないと断ると、今回問題になっているメモの下書きのようなことが12年前にあったんだぞ、4期目のことは考え直してほしいと言って帰った。この人物が笠氏と連携して議会関係者に持って行ったという経過がある」と述べたのです。

経営者とは和住工業の横矢忠志社長。同社は高知市中宝永町に本社がある中堅業者で社長の“豪腕”と公共事業の残土による土地造成で知られています。横矢社長が知事室を訪れたのは2003年7月8日。多忙な知事に会えたのは、当時の自民党県連幹事長・元木益樹県議の仲介のおかげでした。

10月3日、議運委の証言でも笠誠一氏が「土地問題」について言及しました。「横矢さんの持っている河川敷にある土地の登記が間違っている。川の中にある土地だっていう県の見方。横矢さんに言わせると県の書類はメチャメチャらしい」。こうして横矢社長は「疑惑」のキーマンとして急浮上してきます。

「土地問題とはどこなのか」。取材中、強い関心を覚えましたが、当時情報は皆無で、ヒントは「河川敷」という言葉だけ。土木部河川管理課に目星を付けて同課を訪ねると幹部の顔色が変わりました。「情報提供はできない。情報公開請求してくれ」。ピリピリした雰囲気が伝わってきます。「開示請求しようにも場所が分からないと申請できない」と食い下がると「国分川右岸土地問題についてと書くように」。

開示まで1〜2週間かかるとのことでしたので、写真を撮るため卸団地付近に見当をつけて行ってみると、堤防脇の沼に「和住の所有地です」と書かれた看板が林立する異様な光景が目に入りました。

10月8日には土木部が県議会企画建設委に国分川土地問題の全容を報告。横矢氏が購入した川底と周辺の土地を、県が一時は約1億8000万円で買おうとしていたこと、横矢氏は隣接する国有地との交換を求めているが知事の指示で拒否していることなど重大な事実が明らかにされました。

事前に現地を見ていたので土木部の説明が飲み込みやすく、すぐに写真入りで記事を書くことができたのは幸いでした。他紙には内容を理解できるような記事は出ませんでした。後日、開示された資料は膨大な量で、土木部の情報をオープンにしようという積極的な姿勢を感じさせるものでした。その中には元木県議、公明党・草川昭三参議院議員をはじめ多数の政治家が「土地問題」に関わっていたことを示す文書が含まれていました。(中田宏)

※国分川右岸の土地問題は2006年、訴訟で和住側の主張が退けられ終結。その後、和住側が当該用地を買収し、転売して解決しています。