連載 百条委と知事選の取材メモから
2度の知事選挙で明らかになったものは
Q知事辞職勧告決議可決 橋本知事辞職再選挙へ
知事辞職勧告を可決した2004年10月8日の県議会本会議
9月県議会初日(2004年9月21日)に談合を「クロ認定」した百条委報告が承認され、28日から質問戦が始まりますが、反知事派議員は「百条委報告」を利用して橋本知事への攻撃をエスカレートさせていきます。
自民党の代表質問に立った中西哲議員(百条委員)は「やましいことがなければ、何ゆえ笠氏を名誉毀損で訴えなかったのか。坂本ダム談合疑惑は13年前のことであり時効の壁があるが、名誉毀損の問題は現在の話だ」、県民クラブの浜田嘉彦議員は「知事は一貫して不知、不関与を主張してきた。知事の証言は笠氏の証言をほとんど否定する内容。知事か笠氏のどちらかが真っ赤なうそをついている。県民に対してどのような方法で潔白を証明するのか」と主張。自民党の森田英二議員(百条委)は質問時間の大半を割いて「知事の言動や責任を躊躇する行動は、県民に対して余りにも不誠実。ここまで県政への信頼を失墜させた責任は、もはや道義的なものだけでは済まされない。疑惑を引きずったまま現職に踏みとどまることが許されるはずはない。この際知事職を辞める気はないか」と辞職を求めました。これらは、知事自身が「疑惑解明」に積極的に動いていなかったこと、町田照代後援会長が偽証したこと、高知新聞の長期に渡るネガティブキャンペーンの影響もあり、一定県民の気分を反映したものでした。橋本知事はこの時点では「引き続き県政に邁進をしていきたい」と答弁していました。
この県議会で大きな議論になったのが「高野切」と旧山内家資料を県が予算を補正して7億円で購入する問題。「財政危機の中で本当に必要なのか」という議論が広く県民の中でおこりましたが、自民党・県民クラブの反知事派議員は知事追い落としのための「政争の具」に「高野切」を最大限利用しました。「高野切」以外にも2003年知事選挙後から自民党の嫌がらせ的な対応はずっと続いており、県教育長と出納長の人事に理由も付けずに反対して認めなかったこと、新旅費システム予算のカット、男女参画共同条例の「修正」(審議委員の数値目標、苦情処理機関の勧告権の削除)などの知事イジメが執拗に長期間繰り返されていました。
この時期、水面下では自民党・県民クラブが知事の不信任案を9月議会に提出する動きが活発化していましたが、結局は法的拘束力のないトーンダウンした辞職勧告決議案を提出することに落ち着き、10月8日の9月県議会最終日で採決されることになりました。「次の選挙準備が整っていないので本当に辞められると困るが、一定のダメージは与えておきたい」というのが本音の辞職勧告決議でしたが、橋本知事は「可決されれば辞職して再選挙で信を問う。いつまでもこうした事態が続くことは県民にとって幸せなことではない」と7日に表明。予想外の知事の「逆襲」に一気に緊張が高まります。
10月8日の県議会本会議に臨む橋本知事
10月8日の本会議採決では、自民15、県民ク4だけの賛成では過半数の20には届かないことから、態度を明確にしていない公明3の動向に注目が集まりましたが、議員控室に「会議中」の札をかけて報道関係者の入室をシャットアウト。また元親知事派の森祥一議員が辞職勧告決議に賛成するらしいなどという情報が飛び交い、ギリギリの攻防が続きました。採決の結果は、賛成が自民15、県民ク4、公明3、森祥一議員(計22)、反対が21県政会6(朝比奈利広、佐竹紀夫議員は退席)、日本共産党と緑心会6、新風県政会3計(15)で可決されました。決議が可決された直後、間髪を入れず橋本知事が議長に辞表を提出し、選挙戦へと突入していきます。想定外の知事の辞職に、反知事派はさんざん「辞めろ」と今まで言っておきながら、一転して「辞めるのは無責任だ」という大合唱に変わり、橋本氏のペースに翻弄されている様子が手に取るように分かりました。(中田宏)