連載  百条委と知事選の取材メモから
                        2度の知事選挙で明らかになったものは


P坂本ダム談合クロを多数決で認定


   物証のないまま談合をクロと多数決で「認定」した百条委

8月5日にすべての証人尋問を終えた百条委は9月県議会に提出するための報告書をまとめる作業に入りますが、会派の思惑が入り乱れて難航します。

1年間に及ぶ同委員会の調査で判明した中心的な事実は、@町田照代氏が経営する会社と笠誠一氏の間に1億円の貸借があった、A橋本後援会の銀行口座に数千万円の入出金があった、B笠氏が自らの口座に4000万円を送金していたこと。

笠氏と熊谷組との癒着があったことは明らかになったものの、坂本ダム工事は談合だったのか否か、「裏金」が本当に笠氏に渡されて選挙資金に充当されたのか、橋本知事がこれらのことを知っていたのかなどの「疑惑」の核心部分については、疑問は残るものの明らかにすることはできませんでした。

笠氏が語り高知新聞が大きく取り上げた「坂本ダム落札が決まっていた業者をひっくり返して、熊谷組から金を出させることにした」というシナリオは、笠氏自身が「資金提供時に坂本ダムの話はなかった。ダムの話は後で聞いた」(8月5日の証人尋問)と否定しました。百条委でまとめられた報告書は基本的にこれらの到達を客観的にまとめた内容になっています。

■認定→認めざるを得ない

報告書の最大の問題点は坂本ダム工事の談合についての記述。自民党・県民クラブは何が何でも橋本知事にダメージを与える政治的思惑から、談合「クロ」に徹底的にこだわりました。

9月9日の百条委で談合部分について元木委員長が示した案は「談合が行われた可能性が高いと推測する」というもので、物証がない中での一定常識的な表現でした。しかしこれを不服とする県民クラブの坂本茂雄委員が注文をつける形で13日の委員会では「談合が行われたと認定するものである」へと委員長案が変更されますが、極端な記述に公明党などが難色を示します。そこへ不可解な助け船を出したのが21県政会で、「認めざるを得ない」という「折衷案」を提案して原案を「とりまとめ」ました。

県政新風会は「談合は立証できなかったが、可能性は否定できない」、日本共産党と緑心会は「談合の事実があったとは断言できない」に加え「公共工事に関わる談合をなくすために公共事業を請ける企業からの献金を禁止すべきだ」という修正を提案しますが、21県政会の修正を入れた原案が多数決で押し切られました。賛成は自民、21県政会、県民ク、公明、森祥一議員。反対は「日本共産党と緑心会」と県政新風会。

親知事派を自認する21県政会が肝心な所で腰砕けになるのはいつものこととはいえ、「認定する」と「認めざるを得ない」という意味に大差のない「修正」で、物証のないまま坂本ダムの工事は談合だったと断定する前代未聞の報告書に賛成。自らのこれまでの主張と矛盾する不可解な行動をとりました。

討論で田頭文吾郎委員は「高知県の公共工事は橋本知事のもとで不十分さはあるが全国2位の低落札率になるなど改善されてきている。クロと言うなら坂本ダムに入札した企業から献金を請けた県議・政党は返すべきだ」と、自らクロ「認定」した企業から献金を受けとる自民党のダブルスタンダードを批判しました。

報告書をまとめるにあたって中心的な役割を果たしたのは県職労出身の坂本委員でしたが、この時期、坂本委員の所属する県民クラブの控え室に高知新聞記者が足繁く通っている姿がたびたび目撃されました。百条委報告は9月21日の9月定例県議会初日に採決が行われ賛成多数で承認されると、軌を一にして自民党や県民クラブからは橋本知事への不信任案を提出する動きが俄然活発化。9月県議会は予想を超える激しい政治闘争の場になっていきます。(中田宏)