連載  百条委と知事選の取材メモから
                        2度の知事選挙で明らかになったものは


K町田照代氏が笠氏へ1億円貸していた 偽証告発へ


    笠氏が町田氏に借りた1億円の一部を返済した記録。後日徳島銀行から掲載をやめるよう圧力があった

町田照代・橋本大二郎後援会長と笠誠一氏との間に1億円の貸借があったことをいち早く報じたのは高知新聞でした。平成16年2月8日付の同紙には「町田氏関係口座に5000万円」という見出しが踊りました。笠氏が1億円返済のため町田病院の関連会社「笛」の口座に5000万円を送金していた銀行の記録が明らかになったという内容でした。

1月29日の証人尋問では1億円の貸借を完全に否定した町田氏でしたが形勢は一気に逆転。一転して1億円の貸借を「記録にあるが記憶にない」と認めることになります。

高知民報は、それまで町田氏の「貸借は一切ない」という言葉に嘘はないと判断していましたが、その判断は間違っていました。同時に町田氏と笠氏の間に1億円の貸借があっても、「疑惑」の本筋である坂本ダム工事の談合と裏金との関係は明らかになっていないということには変わりはありません。町田氏が笠氏に1億円を貸したのは平成3年10月21日で、知事選前哨戦の真っ最中。落下傘候補の橋本氏が金の流れを知っていたとは考えにくく、町田氏と笠氏との間で密かに処理されていたものと思われます。必ずしも橋本氏の「傷」になることではなかったのですが、後援会長が嘘をついたという事実はいかにも印象が悪く、この偽証は橋本氏を苦境に追い込むことになります。町田氏にすれば10年以上前の記録は絶対に出ないと確信していたのでしょうが、仮に「一時的に貸していた」とあっさり認めていれば、その後の展開もまた違ったものになった可能性はあります。

2月9日、高知民報は笠氏が「笛」に徳島銀行から送金した伝票を入手。秘匿すべき情報を消して直ちにホームページにアップし、2月15日付本紙に掲載しました。2月13日の百条委では、町田氏を偽証告発することが全会一致で確認されましたが、この日の委員会では高知民報が公開した伝票を巡り議論がありました。黒岩正好委員(公明)が「百条委員が知るより先にホームページに出たのは問題だ」と噛みつきました。

この伝票は2月5日の夜、議会事務局職員が徳島銀行に出向いて過去の資料を調べる中で出てきたもので、元木委員長は、伝票が出たと書かれた手紙を6日(金)に委員に書留で郵送しています(伝票は添付していなかった)。9日(月)、牧義信委員が未配達で郵便局に保管されている議会からの郵便物は何かと議会事務局に問い合せたところ、前記の手紙と伝票のコピーを渡されました。高知民報は個人情報等を消してこの伝票を公開しましたが、事務局職員の勘違いで送付していない伝票を渡したために百条委に公開されるより先にホームページに載ることになりました。

さらに委員会では2月8日付高知新聞に百条委員の知らない情報が詳細に載ったことも議論になりました。高知新聞は遅くとも2月6日には笠氏が「笛」に送金していた情報をキャッチし、7日には町田氏に「伝票が出た」と取材をかけています。元木委員長が百条委より先に高知新聞に情報を流したことは明白で、両者の癒着ぶりに委員から不信の声が出ました。

1月末時点で明らかになっていた笠氏の自口座への2000万円送金は、ようやく8日付の「町田氏へ5000万円」の記事の下にひっそりと載りました。最初に出た物証が「笠氏の2000万円」では描くシナリオに悪影響が出るからでしょうか。2週間近く棚ざらしにされた末でした。ここまで露骨な情報操作は報道機関の自殺行為であり、同紙のこのような姿勢は県民の強い批判にさらされることになります。(中田宏)