連載  百条委と知事選の取材メモから
                       2度の選挙で明らかになったものは


J笠氏が自らの口座に2000万円送金していた



2004年1月29日の百条委員会には各金融機関に請求していた調査資料が提出され、92年3月に、笠氏が高知信用金庫本店から東京産業信金穴守支店の自分名義の口座に2000万円もの大金を送金していた衝撃的な記録が明らかになりました。「笠to笠」と報道関係者に呼ばれたこの記録は具体的な物証としてはこの時点で唯一のものでした。

笠氏が2000万円を自分の口座に流していた事実は、笠氏が「自分は橋本知事の窓口」と勝手に称して裏金を集めながら、個人口座に金を流しネコババしていた可能性を示しています。
 これだけ重要な物証が出たにもかかわらず高知新聞はこの情報を当初まったく報じませんでした。「あれだけ熱心に書いてきたのに、自らの描いたシナリオに反することは黙殺する。いくらなんでもそこまでやるのか」とあまりの徹底ぶりに驚いたことでした。

■町田氏が1億円の貸借を完全否定

この日の委員会では橋本大二郎後援会長で医師の町田照代氏、元佐藤工業四国支店長、元戸田建設四国支店長を証人尋問しました。町田氏は笠氏が「町田先生から選挙資金を1億円借りた」と主張していることを「一切ない」と全面否定。斉藤・神毛両元支店長も笠氏が両者から「裏金を調達した」と証言していることを「まったく知らない」と否定しました。

町田氏は「(1期目の選挙で)資金調達の相談を受けたことはない。資金の提供は一切ない」、「後援会長として選挙の金にはかかわらないと決めていた」と断言し、「高齢者の思い違いはよくあること。聞き流したいが県議がいいかげんな話を裏付けも取らず議会で質問し、(百条委で)税金を無駄使いしていることは納税者として腹立たしい」と元木益樹百条委員長(自民)や武石利彦委員(自民)を挑発して激しくやりあいました。

この数日後、町田氏と笠氏の間に1億円の貸借があったことを証明する銀行の記録が明らかになるわけですが、この日の自民党委員の質問ぶりを見ると、どうやら尋問の時点で記録の存在をすでに知っていながら、故意に記録の存在に触れず、偽証するようし向けた形跡があります。

町田 振り込まれた記録はないと思いますし、随分昔のことですから銀行にそういう証明をしてくださいって言っても、10年以上たったことは証明してくださらないんじゃないかと思いますので、せっかくここにお偉い先生がいっぱいいらっしゃるのですから、振り込んだという証明をお見せいただいたらありがたいと思います。
元木委員長 はい。いずれ、それは出てくると思います、はい。

元木委員長は百条委が入手した情報をいち早く独占的にキャッチしてコントロールできる立場にあり、町田氏はすでに明らかになっていた笠氏の自らの口座への2000万円送金の事実も伝えられぬまま尋問を受けました。病院経営ではやり手で知られた町田氏も、老獪な自民党県議団にまんまとはめられたということでしょうか。これまで笠氏の二転三転する証言に翻弄され、いささか沈滞したムードが漂っていた自民党県議団でしたが、町田氏の偽証によって俄然息を吹き返します。(中田宏)