連載  百条委と知事選の取材メモから
                       2度の選挙で明らかになったものは


I横矢社長が「ホテル佐渡」を買っていた

 横矢社長に買収されていた「ホテル佐渡」

2004年1月15日の尋問で「ホテル佐渡」の女将・秋山武子氏は、後日百条委が橋本大二郎県知事にダメージを与える内容の報告をまとめるにあたって有力な材料となる「証言」をいくつもしています。

91年の知事選挙中盤、笠メモに記載されている熊谷組・新進建設・大旺建設・戸田建設・西松建設・和住工業の6社から集めた1億円について、秋山氏は「ホテル佐渡」で「金とは知らずに新聞紙で来るんだ包みを預かり、鍵のかからない1階ロッカーに入れた。2日後、選挙事務所の事務員に金を出すよう言われ1億円と知った。金を出す時に、新聞紙が破れていてチラリッと金が見えた」、「包みは重く1人では持てず従業員と2人がかりでロッカーに運び込んだ」などと証言しました。

秋山氏は包みが1億円と知った後も、あいかわらず鍵のかからない1階ロッカーに放置したり、1億円の重さは約10キログラムで女性1人でも運べるなど、矛盾点の多い証言内容でした。当時知事選に奔走していた橋本氏の知らないところで笠氏が「裏金」を建設会社から受け取っていた可能性は十分考えられますが、秋山氏が実際に1億円の授受を目撃しているとは到底考えられない不自然な証言でした。


1億円の容積。新聞にはくるめないし、2人がかりだと余計に持ちにくい


また秋山氏は、この日、百条委が後日坂本ダム工事を「談合クロ」と認定するうえで極めて重要な証言をしています。

元木益樹委員長(自民)に熊谷組の間島氏について問われ

秋山 その人がなんか取り仕切りゆうとか言うて、チラリッと聞きました。
元木 ああ取り仕切る。
秋山 なんか談合いいますか、なんかそういうことやないでしょうかね。その時にはあまり詳しく聞きませんでしたけど、まあそういうことです。

森田英二委員(自民)の質問に答え

秋山 私、何日かしらんの日記に(4年3月24日のこと)、熊谷組が何か献金、寄付してどっかのダムの工事をとるらしい。これは許せんことだということを書いています。

笠氏は2004年1月15日と8月5日の尋問で「資金提供を受けた時に坂本ダムの話は出ていない」と証言しています。つまり笠氏は1993年(平成5年)まで「資金提供の見返りに熊谷組が坂本ダム工事を談合でとる」という筋書きを知らなかったと言っているのです。

にもかかわらず秋山氏は92年(平成4年)3月の段階で、「熊谷組がダム工事で談合し1億円を捻出する」という「極秘情報」を既に知っていた。笠氏でさえ知らないことを、なぜホテルの女将の秋山氏が知ることができたのでしょうか。秋山氏は談合に関連することについて12年も前のことにもかかわらず記憶が異様に具体的で鮮明でしたが、1月15日に百条委で証言する前夜、笠氏が「ホテル佐渡」に宿泊していたことと無関係とは思われません。

経営行き詰まったホテルを和住が買収

秋山氏が百条委で証言する時期と並行して笠氏と一心同体となって「橋本4選阻止」の中心人物である横矢忠志氏が経営する会社が「ホテル佐渡」の土地建物を購入していた驚くべき事実が9カ月後、明らかになりました。

秋山氏はかねてから経営難のため、「ホテル佐渡」を売却しようとしていましたが、買い手がなかなか付かずに困っていたところ、横矢氏側から土地と建物をセットで買い取りたいという申し出がありました。秋山氏にとって渡りに舟、願ってもないことであり、土地建物は和住側に買収されます。和住は購入後更地にしたものの利用しないまま転売しています。

このような状況が秋山氏の証言内容に影響を与えているのか否かを立証することは困難ですが、証言の客観性に疑問を生じさせるものであることは間違いありません。

百条委が坂本ダムの談合を「クロ」と結論付ける根拠とされた「秋山証言」ですが、こんな代物に頼らなけれければならない自民党県議団や百条委の道理のなさが浮き彫りになりました。(中田宏)