2007年11月11日

連載「橋本県政の16年 県民本位の改革の行方」
L「国策」に県民の立場で直言
県下の市町村長と懇談する橋本知事(2007年8月8日)
激しいネガティブキャンペーンをうち破り、5選を果たした橋本県政に猛烈に襲いかかったのが、国の「三位一体の改革」による地方交付税の大幅減額でした。

2005年度は150億円もの財源不足が生じ、連年のマイナス予算。基金などを取り崩してしのぐ綱渡りのような県予算編成が毎年のように繰り返され、全国の都道府県の中でも最も「貧乏県」の一つである高知県を直撃。非常事態ともいえるような状態に陥ります。

「このままでは高知県は倒産する」というような言葉が、県幹部から頻繁に聞かれるようになり、土木事業など投資的な予算は大きく削減、職員の給与のカットも長期に常態化していきます。

当初橋本知事は、「三位一体改革」について、地方分権につながるものではないかとの幻想をいだきつつも、その実態が明らかになるにつれて「地方分権とはほど遠く、単なる国の財政削減にすぎない」と国の姿勢を痛烈に批判するようになっていきます。生活保護費や教職員給与に対する国の「補助金」廃止についても「交付税で措置しているというが、確保されているかどうかはブラックボックスで分からない」と強く批判します。

2006年5月30日に東京で開かれた全国知事会で橋本知事は次のように発言しました。

「人口と面積で交付税を配分していこうという高知県のような県、山間の町や村は無くなっても構わないという考え方が、公然と語られるようになってきている。この国が戦後の民主主義の中で培ってきた、どの地域に生まれても機会均等を保障していくという国の形の原点を見つめ直すべきではないか」、「財政再建が前面に押し出され、機会均等を無視するほうが正義だという議論が正論かのように戦わされるようになっている。こんなことでいいのか。もう一度、国よりも地域住民の暮らしを守るという立場から、国は何をすべきか、私たち地方は何をすべきかということを整理をすべき」、「子供たちに、この国を愛してくれと求めるのであれば、その子供たちに、君達の機会均等は保障しますよということを示していくことが教育の基本だ。現実には出産、育児、保育、教育に至るまで地方には大きな格差が出て、その格差が拡大再生産されようとしている。子供や孫の世代が、社会の大きな格差という坩堝(るつぼ)の中で、1920年代以降の日本が辿ったような、そういう道に陥ってしまう、それをただ漫然と見ていることは非常に忍びない」。橋本知事の思いをぶつけた発言でした。

核廃処分場への反対

核廃処分場に応募した田嶋前東洋町長と面談する橋本知事(2007年4月6日東洋町役場)
2006年から2007年にかけて、高知県内で高レベル放射性廃棄物処分場を誘致しようという動きが自民党国会議員の後押しを受けて相次ぎますが、橋本知事は国の手法を強く批判。原子力発電に対しては反対でないとしながら、「非常に苦しい地方財政の中で、お金で頬を叩くような形で町長や議会を同意させていこうという国のやり方はおかしい」と国の原子力行政のあり方を厳しく批判し、全国的に注目されます。

2007年2月には東洋町が町長の独断で核廃処分場誘致を応募したことに対して、徳島県知事と共にエネルギー資源庁とNUMO(原子力発電環境整備機構)を訪れて、「民主主義の手続きを踏まずに進めるのが、ほんとうに国の原子力政策か」と猛然と抗議したことが大きく報道され、県民を勇気づけました。

「三位一体の改革」、「高レベル放射性廃棄物最終処分場」など国家的に推進されている政策であっても、県民の利益にならないことにはきっぱりと県民の立場から発言していくのが橋本知事のスタイルでした。(2007年11月11日高知民報)