2010年4月25日

連載「どこへ行く高知の教育」 23 高校再統廃合計画が始動

県立高岡高校、県立高校は地元に大きな役割を果たしている
平成25年以降の高知県を見通した時、高校教育にとって最大の課題となる県立高校再編問題について、県教育委員会は4月13日に開かれた県立学校校長会の席上「高校再編振興計画」の検討を23年度から開始することを明言。大規模な県立高校再編にむけての動きが始まりました。各地域の県立高校は県民の教育権の保障、生活と密接な関係があり、県政の大きな争点になっていくことは必至です。

「平成30年には県下で中卒生が1200人減る。高知市内の大規模な高校の定員が280人。これは相当な数だ」。4月15日の県議会総務委員会で、高校統廃合の見通しについて中沢卓史県教育長はこう答え、ドラスティックな統廃合に踏み込むことを示唆しました。

この2日前、県教委事務局が県下の県立高校・特別支援学校の全校長を招集した校長会では、中沢教育長はさらに明け透けに高校再編について語っています。

「生徒がどんどん減ってきている。今の県立高校の編成が今の状況でいいのかどうか必ず問われる。それぞれの高校の存在価値、存在意義は奈辺にあるのか。見出せないのであれば、見出せるような学校に変えていく必要があるし、できなければ世の中の常識としては、なくなっていくことになる」

21年度、県下の中学校(私立含)の卒業生は7357人。これが県教委の推定では30年に6163人にまで減ります。過疎地に小規模校が多いことを考えると、学校数が半減しても不思議ではない減少数になっているといえます。

県教委は平成16年から25年にかけて実施する統廃合を「県立高校再編計画」に定め、全日制は31校程度に絞る統廃合をすすめてきました。

この計画で廃止対象になった全日制校は、仁淀、大栃、大方商(※)、中芸高校(※)、久礼分校、大月分校(※は定時制などへの変更)で25年度には33校まで減少。さらに西土佐分校、吾北分校は生徒が20人に満たない年が連続した場合に廃止されることになっています。

サバイバルレース

4月13日の校長会の閉会あいさつで池康晴・県教育次長が重要な発言をしています。「この2、3年、校長にしっかり頑張っていただき、存在感を示すことは26年以降の存続に関係する部分もある。高い志で学校経営にあたってほしい」。 各校の「生き残り」にハッパをかけました。

県教委は大規模な高校再編に先駆け、普通科の通学区域を24年度から全廃することを既に決定しています。学区撤廃は生徒を流動化させることで、学校ごとの「明暗」をはっきりさせ、統廃合を加速させることにつながっていきます。

高知県の人口減、少子化の進行は深刻で、定員を大きく割って生徒を集めることができない高校が多く存在しているというのも現実であり、このような状況下で、統廃合の議論は避けられない側面もあります。しかし、県立高校がなくなることで地域の衰退に拍車がかかることもはっきりしており、過疎地にとって高校存続は、絶対に譲れない課題。県教委が統廃合方針を具体的に打ち出せば、県民的な大きな反対運動がおこることも予想されます。

急激な生徒減に対応し、高校の特色を打ち出しながら、地域に不可欠な高校を残すというのは「解のない方程式」のような至難の技で、中沢教育長は「ただの統廃合ではなく、前向きの振興再編計画にしていくが、どうすればよいか本当に悩ましい」。

注目されるのは再編計画を特別支援学校とリンクさせる方針を県教委が明確に打ち出してきていること。特別支援学校は急激な生徒増加により過大規模化し施設が不足。23年から中芸高校に山田養護学校分校を併置する新しい形態をモデルに県下に広げていこうという方向性が示されています。「今後はどこかの部分で高校と特別支援の合同で学校のあり方を考えていく必要が出てくる」(池教育次長)。

地域に障害児教育の受け皿を拡大しながら、高校の存続につなげていくことで地域の願いに添うことができる可能性も含まれており、議論の行方が注目されます。 (つづく)(2010年4月25日 高知民報)