2010年4月18日

連載「どこへ行く高知の教育」 22 小津・西が定員割れ 高校入試に異変

県立高知西高校
平成22年度の県立高校入試が終わり、各高校では新入生を迎え1学期がスタートしました。今年度から高校入試制度が大きく変わったために、県下の入試の様相は激変。新入試制度の課題についてレポートします。

今年度から改変された入試制度の柱は、前期試験の定員を全体の80%(一部校は100%)とし、全校共通の学力試験を課すというもの。従来の前期試験が、中学校の成績などの記録である調査書と志願理由書による「自己推薦」による選考で定員50%だったことか大きく変化したことにより受験生の動向に異変がおこりました。

@小津、西の定員割れ 受験生に人気の高い両校が理数科(小津)、英語科(西)も含めて、全科で定員を充足することができませんでした。定員を割ったのは小津普通4、小津理数4、西普通7、西英語5。

A高知市周辺校の倍率高騰 前期試験の定員が80%に増加する中で、高知市周辺部の高校の倍率が高くなる傾向が見られました。とりわけ目立ったのが春野高校総合学科1・96倍で、県下で最も高い倍率になりました。

高知市中心部の公立中に男子生徒を通わす40代の母親は「後期定員20%は、受験する側にすれば後がないのと同じ。私立を併願しなければ冒険はできない。お金の問題で私立を受けることができない家は偏差値ランクを下げて安全なところを受けるしかない」、同市西部の公立中から後期試験で市外の普通高校に合格した生徒の母親は「子供が4人おり4回の受験を体験したが、今回が一番きつかった。卒業の時点では高校が決まっている子は半分。みんなで卒業を祝う気分にはなれなかった」と話しました。

藤中雄輔・県教委高等学校課長は「検証作業はこれからだが、前期定員を80%にしたことで、不合格体験をする生徒が減ったというところもみてほしい。ベストではないかもしれないが、よりベターなものにするよう手直ししていく。全体をみれば生徒が入りたい高校に入れるかたちになってきており、3年程度はこの制度でいきたい」。

目的は「学力向上」

そもそも県教委が入試制度を改変した最大の目的は何だったのでしょうか。現在の県教委の取り組みの土台に位置する「学力向上・いじめ問題等対策計画(緊急プラン)」と「県教育振興基本計画」では、今回の入試改変の目的を「中学生が自ら努力することで目指す高校に入学することができる」、「学習意欲の向上と基礎学力の定着」などとしています。

県高教組の吉岡太史教文部長は「入試改変を総括するのであれば、県教委自身が言ってきた中学生の意欲を引き出し、学力向上にしするものになっているかどうかの観点が重要ではないか」。県教委が掲げた目標とは相反し、実際には、不本意な入学をせざるをえなかった生徒が増加し、生徒の学習意欲をそいでいるのが現実といえます。

中沢卓史県教育長は「まだ1年目であり、想定の範囲内だ。何回かやるうちになじんでくるだろう。現場や保護者の声を聞き、修正すべきところは修正していく」とコメントしました。(2010年4月18日 高知民報)