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高知県議会史上初の手話によ請願理由の説明(3月12日) |
3月19日に閉会した2月高知県議会で、過密化している県立日高養護学校を適正規模化する対策として、高知ろう学校(高知市中万々)敷地内に日高養護高等部分校を新たに併置する関連予算が可決(日本共産党と緑心会は新分校関連予算を削除する修正案を提出した)。同日採決された知的特別支援学校の高知市への新設を求める請願(県聴覚障害者協会、高知ろう学校保護者など12団体が提出)は不採択になりました(賛成は共産緑心・西風、反対は自民・県政会・県民ク・公明・南風)。
高知市内に知的障害児対象の小中高等部と寄宿舎を備えた県立特別支援学校を設置すべき(今は一校もない)という要求に対し、県教育委員会は「小学部からの入学者が少なく、高等部からの入学者が多い状況を踏まえると、高知市に小学部から高等部までの学校を新たに設置する必要性は低い」(中沢卓史県教育長)という認識を示しましたが、この認識は実態と乖離しており、特別支援教育の条件整備に第一義的に責任を負う県教委の責任を投げ捨てるものです。
■小学部入学は「少ない」か?
県教委は小中高等部までの新校の必要性が低い根拠として、「高等部は増えているが小学部は大きく変動はない」(渡辺豊年・特別支援教育課長)と3月11日の県議会総務委員会で述べています。
県中央部にある知的障害児に対応する高知市立、高知大付属、日高、山田各養護学校に在籍する児童生徒数の10間の推移を見てみます。小学部 11年(81人)、21年(97人)、中学部 11年(104人)、21年(145人) 高等部 11年(177人)、21年(254人)
高等部が激増していることは事実ですが、増えているのは高等部だけで小・中学部は増えていないという認識は事実に反します。
■「学級」の動向
特別支援を要する知的障害児の全容を把握するには、特別支援学校に在籍する児童生徒だけではなく、地域の小中学校に置かれている特別支援学級(以下「学級」)を見る必要があります。県内の知的障害児に対応する「学級」に属する児童生徒の10年間の推移は以下。小学校 11年(230人)、21年(333人)、中学校 11年(99人)、21年(98人)、小学校が激増しているにもかかわらず、中学校が横ばいであることは、中学進学時に特別支援学校を選択するケースが増えていることが分かります。
さらに就学前児童の状況を把握するために重要な参考となる高知市が保育所に保育士を加配している障害児の数は、11年(89人)から21年(153人)へと大きく増加しています(すべてが知的障害ではない)。
就学前児童、小学生、中学生、高校生、いずれも知的障害を持ち支援を要する児童生徒が「右肩上がり」で大きく増大しており、高等部だけの分校設置で「お茶を濁し」ても行き詰るのは時間の問題。
特別支援教育への保護者の理解が進んだことと同時に、地域の小中学校の「学力」の低さばかりが声高に叫ばれる風潮の中で、保護者が居辛さを感じ、「特別支援学級」を選ぶか「学校」を選ぶかは「保護者の希望が第一」(県教委特別支援教育課)という状況の中で、「学級」より特別支援学校を選ぶ流れが強まりが予想されます。
これまで「学級」を選んでいた保護者わずかに選択先を変えるだけで、たちまち対応ができない綱渡りのような状態なのが実際。寄宿舎を備え、小中高等部を持つ県立特別支援学校新設は、県教委として果たさなければならない当然の責任といえるでしょう。(つづく)(2010年3月28日 高知民報) |