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過大規模化が限界に達している高知市立養護学校(高知市本宮町) |
高知県教委は、県立日高養護学校(日高村下分)の過大規模化解消にむけ、高知ろう学校(高知市中万々)の敷地内に高等部だけの分校を新設する計画をすすめようとしていますが、過大規模解消のための論議は高知市内の障害児の動向と密接な関係がある高知市立養護学校(高知市本宮町、以下市立養護)抜きに考えることはできません。今回は市立養護の実態をレポートします。
高知市立養護学校(西岡ゆき子校長)は、高知市内の知的障害を持つ子どもが学ぶ特別支援学校。寄宿舎は設置されておらず、通学可能な比較的障害が軽度の子どもが主に通学しています。
平成21年度の生徒数は小学部28人、中学部27人、高等部63人、訪問学級7人の合計125人。
市立養護でも日高養護や山田養護と同じく、小学生段階では地域の小学校に通っている子どもが、中学高校とすすむにつれ特別支援学校への入学を希望するようになるため、とりわけ高等部が過大規模化していることがわかります。
西岡校長は同校の現状について「今はなんとか工夫してやっているが、敷地が狭く建て増しは無理。2〜3教室増が限界で、これ以上の対応が難しい」と話します。
ろう学校敷地内への新分校新設は、これまで地域の中学校から市立養護高等部を選択していた子どもにとっての選択肢となることは確かであり、市立養護の過大規模化に歯止めをかける役割を果たす可能性はありますが、その一方で新たな懸念材料も生まれています。その懸念とは小学部から入学を希望する子どもの増大です。
高知市教育委員会によると22年度から市立養護小学部に入学を希望している新1年生は11人。 これまでの小学部への入学希望者はおよそ5人程度で推移しており、現在小学部は6学年全員で28人。新1年生11人は、同校にとって極めて重みをもつ人数です。突然の倍増の理由は市教委関係者も「選んでもらえることはありがたいが、理由はまだ分からない」と戸惑いを隠しません。
入学希望者の倍増は直接的には、これまで地域の小学校を選択していた子どもが市立養護を希望するケースが増えたからですが、その背景として考えられるのは、@特別支援教育への理解がすすみ小学部段階から専門教育を受けさせたいと希望する保護者が増えた、A保護者の生活が大変になる中でスクールバスなどの支援がある特別支援学校を選択する保護者が増えた、B同校が子どもが通学できる利便性のよい場所にあるなどの理由が考えられます。
来年度の小学部新1年生の倍増によって同校では1教室増設が必要となり、綱渡りのような状態が続きます。市教委関係者は「このペースが続けば対応は無理。入学定員枠を設けるしかない」。
そもそも特別支援教育に責任を持ち、学校設置義務を負うのは県教委です。市立養護は障害者教育が義務化される1979年よりはるか以前1663年に革新高知市政の先進的取り組みによって設置された歴史的経過をもっていますが、皮肉なことに、高知市エリアにおける障害児教育で県教委が果たすべき責任の所在を見えにくくし、高知市教委に肩代りさせる傾向が結果的に生じてしまった側面は否定できません。
このようなことを考えた時に、県下で最も多くの障害児が生活する高知市内に、県立の知的特別支援学校が設置されるのは当然(現在はない)。県教委自らが高知市内の子どもに責任を持つ立場に立って、高等部だけの分校設置にとどまらず、小中学部も一体化した特別支援学校の新設が急がれます。(つづく)(2010年2月28日 高知民報) |