2010年1月24日

連載「どこへ行く高知の教育」 R山田養護 急がれる規模適正化

山田養護学校の紙工で使われている特別教室
県立日高養護学校と同様に山田養護学校(香美市土佐山田町)でも、知的発達障害児の入学増などによる過大規模化が問題となっており解決が急がれています。

山田養護学校の今年度の児童生徒数は小学部36人、中学部50人、高等部80人(高等部は高知市以東、嶺北地域が校区)の合計166人(日高養護学校は146人)。

特別支援学校におけるクラス編成は小中学校は6人で1クラス、高校では8人で1クラスという基準が定められていることから、同校には小学部7クラス、中学部9クラス、高等部11クラス、合計27クラスが設置されています。

山田養護学校のこのような現状には、同校の教職員から「とにかく教室が足りない。スペースがないため教室をつくるには特別教室をつぶすしかない」。保護者からも「本当に大変な状況。早くなんとかしてほしい」(同校PTA役員)という悲鳴のような声があがっています。県教育委員会も現状の施設での児童生徒数は100人程度が適正規模であり、過大規模解消は待ったなしの課題であるという認識を示しています。

そこで県教委は、県下の特別支援学校を再編し、県立中芸高校(田野町)に山田養護学校の分校を平成23年度から併置することで県東部の児童生徒を吸収し、山田養護学校の規模を適正化していこうと計画しています。

中芸高校に併置される新分校は高等部だけを予定している日高養護学校分校とは異なり小中高一体ですが、寄宿舎がないために、自立に向けて寄宿舎教育を希望する保護者の選択肢にはなりません。また普通高校と同一棟を共有する新分校で、どれだけ専門的な教育が保証されるのかという不安も根強くあることから、通いなれた山田養護学校から転校を望まない児童生徒も少なくないことが予想されます。

県教委特別支援教育課は「学校の選択は保護者の希望を一番に考える。居住地で線引きして、分校に行きなさいということはしない」としており、新分校を選択する生徒がどれだけいるのか、山田養護学校の規模がどの程度適正化されるのかについては不透明な部分も多く残されています。

新分校の開校は23年度を予定していますが、学校関係者によると22年度はさらに高等部が1クラス増加する見込み。今は中高生が作業学習に使用している特別教室をクラスの教室に転用するしかない状況になっています。

山田養護学校では、生徒の自立をめざすため、教科学習だけでなく紙工、陶工、木工、缶工、鉄工、布工、農耕など多彩なメニューで子どもの適性を見つけ、支援する作業学習に力を入れており、作業学習に取組むスペースである特別教室がなくなることは、狭隘化だけに止まらず、特別支援教育の核となる専門性の機能弱体化にもつながりかねない重大問題です。「特別教室がなくなるのが一番痛い(福田俊樹校長)」。

同校は22年度は現状よりさらに過大規模化がすすみ、新分校ができても直ちに状況が大きく変ることは考えにくいのが現状。過大規模が一定期間は続くことが考えられます。分校設置で事足れりとするのではなく、本校の過大規模化による子どもの教育へのマイナス影響を緩和するための人的、物的支援を県教委は引き続き取組んでいく必要があります。(つづく)(2010年1月24日 高知民報)