2009年5月24日

連載「どこへ行く高知の教育」 L尾崎知事の発言に一定の変化
高知市内の校長にスタンディングオベーションで見送られる尾崎知事(4月30日)
昨年7月に公表された「緊急プラン」(学力向上・いじめ問題等対策計画。4年後に全国学テ平均点と生徒指導発生率で全国水準をめざす)以降、高知県の教育が尾崎正直・県知事の強いトップダウンの影響を受けてすすめられてきたことは否めませんが、今年の3月頃から知事の発言に微妙な変化が見られるようになってきています。

4月30日、高知市桟橋通りの「アスパルこうち」で知事と高知市内の小中特別支援学校の校長との懇談会が2時間にわたって開かれました。この席上、知事が行った講話の中で以下のような発言がありました。

「知事という行政部局の長であり、教育委員会制度の独自性については理解している。予算編成権、総合調整権の範囲内において、関わらせていただく」。

知事の同様の認識は、この場に限らず最近は度々聞くことができます。 また、この日の会議では大崎博澄・前教育長の名前を何度も出し、前県政時代の取り組みを肯定的に紹介しました。4月13日に開かれた知事の政治資金パーティでも「土佐の教育改革の成果」という言葉を強調するなどの場面が最近目立ちます。

これらの言動からは、行き過ぎたトップダウンを一定修正し、「土佐の教育改革」を肯定的にとらえることで前県政の教育行政からの連続性を演出することを意識していることが伺われます。

知事の認識の変化は、県教委の動きにも反映してきています。

中沢卓史県教育長の発言からも「高知の子どもは、知徳体が劣っており、かわいそう」というような一面的な「子ども観」のトーンは薄まり、現在県教委が作成作業をすすめている「教育振興基本計画」中間取りまとめでは、高知の子どもの積極面が一定強調されるようになっています。

また同じく中間取りまとめには「土佐の教育改革の検証と総括」という項目が記され、「県教委と教職員組合の対話で施策が実施されるようになったのは画期的」、「10年間の取り組みで国公立大への進学者増、少人数学級の拡大などの成果も出ている」、「子どもたちが主人公の合言葉のもと教育を正面から議論し高知県の教育を良くしていく下地が整った」と高く評価しています。

知事と県教委のこのような認識は、「学テ」を前提にして教育にPCDAサイクルを持ち込み一面的な学力を競うことを是とする流れに乗るものではありながらも、「高知の教育が悪いのは教師が怠けているから」などと少人数学級を敵視するような自民党県議団=タカ派文教族の偏狭な教育観とは一線を画すものであり注目されます。(2009年5月24日 高知民報)