2009年4月26日

連載「どこへ行く高知の教育」 J県高校奨学金の問題点(2)
県高等学校奨学金を利用するには連帯保証人が2人必要であり、1人は保護者で構わないものの、もう1人は「保護者ではない独立した生計を営む成人」でなければならないとされていることは前号で指摘しましたが、実際には保証人に祖父母など高齢者がなることさえ難色を示す運用の実態があります。

県教委高等学校課は「高齢の保証人は極力避けてもらいたいが、どうしても他にいなければ認めている。4〜5年前にはそういうことを言っていた時期もあったが、今はやっていない」。 

高校で奨学金を担当する教員に話を聞くと、「高齢者の保証人でも最近はつき返してはこない」という教員もいる一方、「原則は70歳以下と言われ、祖母がなっていた保証人を変更させられた」と言う教員もいました。

「高齢者の保証人は極力避けるべき」という県教委の運用は、「保証人になってくれと他人に頼むことができない家庭が確実に増えている」(奨学金担当教員)という現実を無視したものです。

県教委は制度の見直しを待つまでもなく、直ちにできる当面の改善策として、高齢の祖父母などを保証人として認めないことのないよう学校に指示を徹底すべきではないでしょうか。

必要性乏しい実印

連帯保証人になった人には実印を押印させ、印鑑証明の提出を求める運用が行われています。

同奨学金を利用する場合には、申請書を高校を経由して県教委に4月30日までに届けなければなりません(申し込みは基本的に年1回だけ。この期日に間に合わなければ、翌年まで申し込むことができない)。その後県教委事務局などの審査を経て、6月に貸与が決定し、決定通知が申請者に届けられるのが7月。

ここで申請者は、2人の連帯保証人に印鑑証明を付けた実印を押印してもらった誓約書を再び県教委に提出して、やっと8月から貸与が始まります。

しかし、印鑑登録をしていない人にとって、他人の保証人になるためにわざわざ実印をつくり、印鑑登録証を発行するなどの一連の手続きが、勤務や手間暇を考えると高いハードルになっていることは容易に想像がつきます。「最近、保証人を頼めないケースが増えている」(奨学金担当教員)

法的に必要のない実印をわざわざ押させる理由は「保証人に自覚をもってもらうため」(高等学校課)などというあいまいなものでしかありません。

このような同奨学金申請実務の運用から見えてくるのは、経済的な理由で生徒の学びが断念されることのないように制度を最大限活用してもらうという積極的な姿勢よりも、手続きを煩雑にして利用のハードルを高くするような「官僚的」な対応でした。次回は、貧弱な奨学金の返還免除や猶予の制度についてみていきます。(つづく)(2009年4月26日 高知民報)