2009年4月12日

連載「どこへ行く高知の教育」 H遅すぎる授業料減免決定の時期

高知市立高知商業高校(高知市大谷)
県立高校の授業料減免制度を考える上で、減免基準ともに決定の時期が大切なポイントになります。

現行の県教委の制度では、8月に減免の決定がくだり、9月分の授業料から減免が反映します。すでに引き落とされている4月から8月までの過徴収分(9900円×5カ月分)は、高校側が各家庭の口座へ振り込んで「返済」することに。

現行制度で免除対象になるのは、生活保護基準以下のギリギリの状態の家庭が大半であるにもかかわらず、高額な授業料を半年近くも払わせるという対応は、あまりにも配慮に欠け、制度の趣旨に反するものです。

3月6日の県議会予算委員会では中根佐知県議(日本共産党と緑心会)が、授業料免除の決定時期を早めることを要望しました。中沢卓史・県教育長は「免除者の決定には前年度の所得証明を使っていることから、証明書の発行が6月以降となり、申請件数が多数にのぼるため、前倒ししたいと思いながらも実務上困難」と回答しました。

では高知市立高知商業高校の減免決定時期はどうなっているでしょうか。「なるべく早く決定するよう心がけており、4月分から減免している。お金に困っている人に5カ月間も授業料を払わせるわけにはいかない。4月の入学時には教科書や制服など他にも金がかかりますから」(高知市教委関係者)。

県教委と比して困難を抱える家庭や生徒にはるかに寄り添う対応をしていました。高知商高の新入生が減免を受ける場合のスケジュールは以下。

3月末の合格者招集日に免除制度を周知し、4月13日が学校提出締め切り。20日には市教委に申請書が届き、学校教育課の決済で減免を決定し、4月分の授業料に映させ引き落とさない。添付する収入証明は、前々年度の所得で構わない。

一校だけの対応ですむ高知商高と、県下全域に30校以上ある県立高校に対応する県教委とを単純に比べることはできないにしろ、経済的に困窮している家庭をどう援助してくのか考える根本姿勢に高知市教委と県教委では随分と温度差が感じられます。

「高校現場では3カ月授業料を滞納したらクラス担任が入った納入促進委員会が開かれ、6カ月を超えたら除籍もある。事務室は督促の電話ばかりしているような状態。県全体では数が多く難しいかもしれないが、減免するならもっと早く決めるべきだ」(授業料減免を担当する県立高校教諭)。

群馬県教委は、経済状況の急速な悪化を受けて今年4月から県立高校授業料の減免制度の手続きの迅速化をはかりました。群馬県教委の担当者に問い合わせると「これまで群馬では申請月の翌月から免除することになっていたが、これを申請月から免除することにした。収入判定を前年度の所得証明にしている県もあるようだが、群馬では申請のあった日からの見込みで認定している」。

高知市や群馬県にできることが、高知県でできないはずはありません。22年度に県教委が行うという制度見直しの中では、授業料減免の4月からの実施を真剣に検討すべきではないでしょうか。(2009年4月12日 高知民報)