2009年4月19日

連載「どこへ行く高知の教育」 I県高校奨学金の問題点(1)
経済的な理由で高校で学ぶことを断念することのないように修学を保障する重要なセーフティーネットとして、授業料減免制度とともに重要なのが、「県高等学校奨学金制度」です。

現在の制度は、月額18000円(国公立自宅通学)、23000円(国公立自宅外通学)、30000円(私立自宅通学)、35000円(私立自宅外通学)を無利子で貸し付けるもの。

貸与の対象者は、成績条項がない場合には、母子家庭などの2人家族で年間収入(給与総額)が300万円程度以下の世帯、4人家族であれば430万円程度(通知簿の平均点が3以上という成績条項をクリアしていれば2人家族で400万円、4人家族で580万円に緩和される)。

申し込みは年1回だけ(急変は除く)で、4月末までに県教委に集約し、6月に貸与者を決定。さらに誓約書を書かせるため8月からの貸与開始となります。

制度を利用する資格の判定が、授業料減免制度と比べ、生活の困窮度をより反映した収入基準額になっていたり、所得を証明する書類が前々年度のものでも構わないなど、利用する生徒や家族の立場に立った運営がされている面もありますが、以下のような問題点もあります。

@2人の連帯保証人が必要
A2人の連帯保証人に実印を押印し印鑑証明の提出を求めるなど手続き書類が煩雑
B返還免除や猶予制度が皆無に等しい
C年度途中からの受け付けができない
A一部に成績条項がある 

県教委高等学校課では平成22年度にむけて現行の修学制度の改善を検討するとしています。現行の奨学金制度の問題点について考えていきます。

@2人の連帯保証人 県高等学校奨学金制度を利用する前提になるのが、2人の連帯保証人です。1人は保護者で構わないものの、もう1人は保護者ではない独立した生計を営む成人でなければなりません。

今ほど先行きの見えない時代に、生活に困窮する母子家庭が連帯保証人を構えることは容易なことではありません。母親に保証人を頼めるような親兄弟が健在であればよいとしても、そのような親族がいない場合、「連帯保証人になってくれ」と他人に頼めるような人がどれだけいるというのでしょうか。

2人の連帯保証人が必要とされることで、親の甲斐性や「信用力」によって、子どもの修学の機会が奪われかねない制度になっているのが実態です。当面、保証人は1人、保護者だけでも利用できるように早急に改善すべきです。さらに大学奨学金で一部行われているような公的な保証機関による保証も展望していくべきでしょう。

3月17日、部落解放同盟県連は県教委との交渉で、同奨学金の連帯保証人を1人にすることを強く求めました。同奨学金の前身がかつての「同和奨学金」であることもあり、解同組織はこの制度を重視して、毎年のように県教委へ改善要求を続けています。同奨学金に限れば、解同の主張は当然の要求であるといえます。 (つづく) (2009年4月19日 高知民報)