2009年3月22日

連載「どこへ行く高知の教育」 F高知市校長会が学力向上策発表

記者会見で学力向上策を発表する高知市校長会役員(2月26日)
2月26日、高知市小中特別支援学校長会(橋本正博市長会長)の役員が異例の記者会見を開きました。

「高知市立小中学校における学力・体力の向上にむけて」と題し、@授業改革、A授業時間の確保、B家庭学習の見直しと習慣化、C小中連携、D体育の授業の見直し、という5本柱の改革案を、県教委や高知市教委からの押し付けでなく、現場からの自発的な動きの発露として公表するのが眼目でした。

「自発的」とは言いながらも、その内容は県教委が昨年発表した全国学テの平均点を全国平均並みに引き上げるための「緊急プラン」、県教委と高知市教委が一体となってすすめている「中学校学習習慣確立プログラム」、平成21年度県予算に計上されている「人的支援」などを総花的に並べたものにすぎず、校長に記者会見までさせるパフォーマンスには高知市教委が、県議会や県教委事務局内に根強くある高知市への手厚い「支援」への反発を緩和しようという目論見が伺われます。

149人?

ここで21年度に県教委が行う予定である高知市への人的支援について詳しく見てみます。

2月17日付の「高知新聞」は「高知市全中学校に150人の補助員配置」と4段見出しで報じました。尾崎正直・県知事をはじめとする関係者も一様に「150人」という認識で発言していますが、実態とは落差があります。

まず「150人」のうち60人は、従前から高知市教委が市単独で配置してきた大学生の放課後ボランティアによるチューター。21年度も市単で配置されており「県教委がなぜ人数にカウントするのかよくわからない」(市教委関係者)。県教委の予算説明資料にもよく見ると小さく「県と高知市をあわせた人数」との記述があり、県教委が新たに配置するのは実際には90人です。

この90人の内訳は8時間勤務の学力向上補助員が16人、2時間勤務の学力向上サポーター19人、4時間勤務の放課後学習支援員が51人。高知市内の中学校の総数は19校であることから、1校あたりでは2人役程度の非正規職員(教員資格の所持者ではない)が増えるに過ぎません。

8時間勤務の職員の増員については「エスケープした生徒を追いかけるなど、1人でも人手が必要なので助かる」という声がある一方で、「放課後に2時間だけ来ても、生徒とのつながりがなければ役にたたない」、「短時間のパートを配置するより、臨時でもよいので学校に1日いる教員を置いてほしい」という声もあります。
 
■「ブロイラー」

冒頭の校長会による「改革案」について、高知市立中のある校長が次のような感想を語りました。「下手をするとブロイラー(詰め込みの意味)になる危険はある。上から言われるとおりにただガンガンやるのではなく、管理職がしっかり受け止め、生徒の実態に応じたやり方でなければならない。平均点が多少上がっても、窓ガラスが割れ放題の学校になっては元も子もない」と、機械的に反復させるだけでなく、生徒の実態から出発することの大切さを強調しました。(2009年3月22日 高知民報)