2009年2月1日

連載「どこへ行く 高知の教育」 B学テ結果市町村別公表 「望ましい」
第2回学テの結果を発表する県教委(2008年8月29日)
2008年、橋下徹・大阪府知事や寺田典城・秋田県知事により、文部科学省の全国学力・学習状況調査(以下学テ)の市町村別の結果を地教委側が反対しているにもかかわらず、一方的に公表し、競争をあおるような動きが強まりましたが、尾崎県政の下でも、知事や県教育長が学テの公表が「望ましい」と相次いで発言するなど、前橋本県政とは状況が大きく違ってきています。

昨年7月11日の高知県議会本会議で中沢卓史・県教育長は中西哲議員(自民)の質問に答え、「私としては全国学力・学習状況調査の結果は、本来は保護者に説明責任を果たすことが望ましいと考えている。一方、文部科学省は過度な競争や序列化を防ぐため、調査の実施要領で公開に制約を設けている。調査結果の公開について、どの情報をどこまで公開が可能か、妥当かを検討したい」と答弁しました。

翌日の「高知新聞」が、この発言を「市町村別公表を検討」と誤って報じたことから翌日、中沢氏は高知市内で開かれたPTA関連行事のあいさつで「市町村別に結果を公表するとは一言も言っていない。この調査は市町村別や学校ごとの公表はしないという前提で取り組んでいる。しかし県教委が取り組んだ結果を保護者に説明責任はできるだけ果たすべきと私は考えており、このようなリスクを勘案し、できるだけ保護者に説明責任を果たすにはどうしたらよいかを検討したいと述べた。私も新聞を読んでびっくりした」と釈明しました。
 
中沢県教育長は「市町村別公表」を直接的には否定したものの、発言は「公開して競争させることが望ましい」という前提にたっています。「高知県では結果は学力分析の資料以外には使わない。学校の序列化などの心配はない」(08年2月2日、高知県子どもと教育を守る連絡会との交渉の席で)という大崎博澄・前県教育長とはトーンが異なっています。

中沢教育長は高知民報の取材に対し、「私個人としては情報はできるだけ保護者に出していくべきという信念を持っているので、何ができるか相談してみたいと言っている。前教育長とトーンが違うではないかと言われれば、そう受け取ってもらって構わないと」とコメントしました。

公表が望ましい

さらに尾崎正直知事は、08年9月18日の定例記者会見で、学テの公表について以下のように述べています。知事発言の要約は以下。

県知事 基本は市町村において、できれば公表されることが望ましいのではないかと思うが、今の制度のもとでは市町村の判断に委ねざるを得ない。公表により住民に自分たちの市町村の児童生徒の基礎学力の程度とか、生活状況などについて客観視されることとなり、問題意識が高まるということがある。ただ点数を上げることだけが自己目的化してしまうこと。これはよくない。過度の競争をあおる懸念はなきにしもあらずだ。

県や国が、一括して市町村別の公表をしないという前提条件で各市町村が参加している。これはルールの問題だ。その上で市町村が自主的に公表することは何ら妨げられていない。市町村が自主的に公表するのが最も望ましい姿だが、強制はできない。市町村の判断が大切だ。だけど住民はどうか。知りたいのではないか。その気持ちを十分踏まえた対応をするのが一番望ましい。ただ強制はできない。

このように知事発言は、「強制はできない」と繰り返しながらも、公開に積極的な前のめりが目立ちます。(2009年2月1日 高知民報)