2006年6月11日

連載 記者クラブを考える
E鎌倉方式の光と影(2) 

鎌倉市が広報メディアセンターに登録できる報道機関から政党機関紙を除外していることについて、同市広報課の山田幸文課長に話を聞きました(聞き手は高知民報・中田宏)。

−なぜ政党機関紙は除外されているのか。

山田 メディアセンターは、組織内部の構成員だけではなく一般市民に広く報道している媒体を対象にしている。

−日本共産党機関紙「しんぶん赤旗日曜版」は同党の党員よりずっと発行部数が多いが。

山田 部数ではない。機関紙は発行目的が内部に組織の意思を伝達すること。そういう媒体に市役所の公的スペースを使用させることには問題がある。

−市政取材も政治活動であるから報道とは認めないということか。

山田 そうだ。

−企業であれ団体であれ、言論出版、報道の自由がある。それは言論への介入ではないか。

山田 報道の自由は認めている。記者室の利用ができないというだけだ。

−市長の記者会見にも出れないではないか。取材の自由、平等な情報へのアクセスがなければ報道の自由はない。取材目的であるのに部屋を使わさせない、会見に出席させないのは差別だ。

山田 個別の取材には応じている。

−矛盾している。取材は政治活動だから認めないと言ったはずだ。そうであればすべて断るべきで、個別取材に応じることが可能なら、記者会見に出れない理由は何なのか。

山田 とりあえずやってみて、問題があったら考え直そうということで始めた。その後は問題が特になかったので、市内部での議論はない。

−政党機関紙から実際に登録の申し出等はあったのか?

山田 ない。96年のメディアセンター開設直後に市議会で「なぜ政党機関紙を除くのか」という議論があったようだが、その後は特に議論もなく、問題も起きていない。実際の問題として、県庁所在地でもない人口17万人の鎌倉市政にメディアはそれほど関心を持っていない。記者会見の案内をセンターに登録している報道機関に出しても取材に来る社は限られている。実態はセンター設置以前とあまり変わっていない。

−鎌倉の取り組みは「記者クラブ改革」の草分けのように言われているが、政党機関紙の除外規定により、逆に後進的になってしまっているのではないか。

山田 意見は参考にする。

広報課長から政党機関紙を排除する明確な理由を聞くことはできませんでした。

鎌倉市が県庁所在地ではない小都市であることもあり、鎌倉記者会の加盟社がメディアセンターに登録して常駐しているだけで、ほとんど状況が変わっていないのが実態のようです。