2006年5月21日

連載 記者クラブを考える
C知事記者会見への出席問題

  4月27日の「懇談会」 実態はカメラも入った完全な記者会見だ
県政記者クラブに加盟する報道各社が県広報課から受ける情報提供は、@投げ込み、Aレクチャー(担当課による説明)、B緊急ファックス(災害や突発的な問題が起きた時に各社に連絡する)の3種があります。

これらの情報提供の量は膨大ですが、県庁側が都合よくコントロールした「広報したい」情報に基本的には限られることから、これだけでは県政の本当の姿は見えてきません。

そこで報道各社が様々な角度から関心のある情報を集めるわけですが、その有力な手段として知事の「記者会見」があります。県政上の課題について知事の考えを生の言葉で直接聞くことは、県政取材の上で大きな意味を持ちます。

とりわけイージス艦寄港や県警捜査費問題、「選挙資金疑惑」など、県政が激しく揺れ動く時には、会見での知事発言が極めて重大な意味を持つことから、会見に参加して取材できるかどうかはメディアにとって重大事です。

現在、橋本知事はおよそ月に1回、「会見」を開いていますが、この会見には県政記者クラブ以外のメディアは基本的に参加することはできません。2003年には「赤旗」が県政記者クラブに参加を申し入れましたが拒否されています。知事の公的な説明の場であるはずの会見になぜ特定のメディアしか参加することができないのでしょうか。

答えは「会見」ではなく「懇談」であるから。「知事と県政記者=県政記者クラブとの私的懇談なのだから他社はご遠慮ください」という理屈です。知事の日程を管理している秘書課でも「県政記者との懇談」(議会のない月は懇談、議会前には記者会見と記述)という分かりにくい表現を使っています。このように知事会見が不透明な形で今日まで残されている経過については「おそらく中内県政時代のオフレコ懇談の名残ではないか(高知新聞の中堅記者)」。

「懇談会」といいながらも、実態はテレビカメラの入ったオンレコ会見そのもの。記者クラブに加盟していないメディアを排除して特定のメディアが知事会見を独占しているのが実態です。県秘書課の大原充雄課長に知事会見への参加制限について問うと「知事はどなたに来てもらっても問題ない」と述べていることからも、この問題の主たる要因は記者クラブの姿勢にあります。

この問題への認識を県政記者クラブに加盟する記者に聞くと「排除するつもりはない」と述べながらも、@悪意のある者がメディアを騙って入り込み妨害されたら困る、A日程調整など記者クラブが汗をかいてセットした会見にただ乗りするのはずるい。だからクラブ社以外に開放するのは難しいという回答が返ってきます。整理すべき点はいくつかあるにせよ、知事会見という公的性格の極めて強い情報を一部メディアが排他的に独占していることが、国民の知る権利を、メディア自身が阻害しているという重大性を感じているとは思えない認識です。