2006年7月30日

連載 記者クラブを考える
K県政記者クラブからの回答(3)

     7月25日の知事会見
県政記者クラブが議会前以外の定例知事会見への「高知民報」の出席を認めない理由として3番目にあげたのは、(3)出席者が増えすぎれば際限がなくなる
 
「際限がない」という意味合いは、おそらく「高知民報」の知事会見への参加を認めれば、他のメディアが参加を求めてきた時にも断ることができなくなるので、物理的なスペースや、発言時間が不足するということを念頭に置いていると思われます。また議論の過程では各メディアから会見の妨害を目的にしたブラック・ジャーナリズム等の進入を許してしまうのではないかということを心配する声も多く聞きました。
 
スペースと発言時間
 
県政記者クラブが「クラブ主催」の知事会見を開放したところで、すでに完全開放されている長野県で支障なく運営されていることをみても、高知県でメディアが取材に殺到して物理的に混乱するようなことは実際問題としてまず考えられず、説得力に乏しいものです。

記者クラブ加盟社以外(クラブ加盟社でもほとんど県政報道をしていないメディアもある)で、日常的に県政の取材をしているのは「高知民報」しかないのが実態であり、会見を開放したところで、現状と大きな違いが出るとは思えません。また大事件がおきたときには、全国から雑誌やスポーツ新聞などが殺到することもあり得ますが、それは突発的な問題であり、ここで論じるべきものではないでしょう。

現在、知事会見の会場として使わわれているのは第2応接室。中央にラウンド・テーブルが置かれ15人も座れば一杯になりますが、後方の席には余裕がありますし、もし入りきらなければ、会場を変更すればよいだけのこと。30人程度が座れてテレビカメラを4台設置できるスペースなど容易に用意できるはずです。仮に会見場が狭くて会見に支障が出るような場合には、すべてのメディアを代表して県当局とスペースの確保を折衝する役割を果たすのが、「知る権利」の代行者「ザ・プレス」である記者クラブの使命のはずです。

会見での発言については物理的に制約があり、難しい面があるのも事実です。現在の知事会見の時間は40分間程度。会見開放によって発言者が大幅に増えるようなことがあれば、時間延長の要求を記者クラブが県当局にしていくことと同時に、会見を運営するために議事を整理して、どこかで発言者を区切る必要性があるのは当然です。

「際限がなくなる」という回答は、発言者が増えてクラブ加盟社が充分質問できなくなることを懸念していると思われますが、時間が不足する白熱する会見もあれば、ほとんど質問が出ず予定より早く終わる低調な会見もあります。一律的な対応ではなく、公平な運営を心がけながらケースバイケースで個別判断をすればよいのではないでしょうか。発言希望者が多数であれば希望しても発言できないことがあるのは、どこの主催の会見であれ同じです。

会見を開放していくための障害となる問題点を取り除いていく立場ではなく、最初から閉鎖ありきで「ひょっとするとあれがある、これがあるかも」と仮定を繰り返して開放しない理由にしていく県政記者クラブの姿勢は残念としかいいようがありません。 会見をインターネットで生中継しようと思えばいつでもできる時代に、会見の独占にこだわる意味がどれだけあるというのでしょうか。

県政記者クラブから会見の開放を拒否する回答が出された後、クラブに加盟する記者から「自分の思いとは違う」、「会見は開放されなければならないと思う」という声を地方メディアだけでなく、一部全国紙記者からも聞くことができました。必ずしも現状をよしとしていない記者もいることを心強く感じましたが、月替わりの幹事社、クラブ総会の総意でなければ意思決定できないクラブの性質上、改革の道のりはまだ遠そうです。