2006年7月23日

連載 記者クラブを考える
J県政記者クラブからの回答(2)

県政記者クラブが議会前以外の定例知事会見への「高知民報」の出席を認めない理由として次にあげたのは、(2)政党や宗教団体の機関誌などは日本新聞協会加盟社に準ずる報道機関として想定されていない

この「理由」はまったくのすり替えであり、重大な問題点が含まれています。
 
日本新聞協会
 
「記者クラブに関する日本新聞協会編集委員会の見解」は、日本新聞協会加盟社、また準ずる報道機関により記者クラブを構成すると述べています。日本新聞協会とは、日刊紙(全国紙、地方紙などの商業紙)新聞、放送局、通信社141社の大手メディアで構成される任意の業界団体で、新聞倫理綱領(自由と責任、正確と公正などをうたう宣言)の実現が目的とされています(大手商業メディアでも、スポーツ紙、夕刊紙、週刊紙、雑誌などは協会に入っていない)。協会に特別な法の根拠があるわけでなく、あくまでも自主的な任意の団体です。

「新聞」とは何か

放送局は、放送法に基づく許可を得なければ放送事業をすることが出来ませんが、「新聞」を規定する法律はなく、新聞を出すのに誰の許可も必要ありません。これは憲法が保障する言論出版の自由を支える根幹部分をなすものです。ミニコミ新聞であろうが全国紙であろうが、発行元が株式会社であろうが社団法人であろうが、政党や団体であろうが新聞としては平等です。

唯一、「新聞」を法律で定義しているのが公職選挙法。同法148条では、選挙中に選挙報道を許される「新聞紙」として@月3回以上発行、A定期の有償発行、B第3種郵便物であること、C選挙の6カ月前から発行されていることを条件にしています。これ以外に「新聞」を規定している法はありません。つまり公選法148条をクリアしている「高知民報」も、日本新聞協会という任意団体に属している「朝日新聞」も法律的には平等ということになります。
 
時代錯誤

「高知民報」は日本共産党の純然たる機関紙ではなく高知民報社の責任において発行しているものですが、法的に平等であるにもかかわらず、政党や団体の機関紙であることを理由に不当な差別を行うことは、言論出版の自由に抵触する重大問題であり許されないと考えます。

ここで県政記者クラブの回答が、会見参加を断る理由として協会加盟問題を持ち出してきたことは不可解と言うほかありません。「見解」が協会加盟問題に言及しているのは、記者クラブへの加入条件として示しているものであり(県政記者クラブも規約で構成を同様に定義している)、はるかにハードルが低いはずの会見への参加条件ではありません。「高知民報」は県政記者クラブへの加入を求めているのではなく、知事会見への出席を求めているに過ぎません。会見への参加を断る理由に「協会加入」を持ち出すのは理解に苦しみます。

もし県政記者クラブが、今日においても「協会加盟社と準ずる機関にしか会見に参加させるべきではない」と考えているのであれば、「見解」がめざす「開かれた会見」とはほど遠い時代錯誤的感覚といわざるを得ません。そもそも協会加盟社や準ずる機関であれば、記者クラブに加入すればよいわけで、会見に参加できないという問題は起こりえないものです。

記者クラブという任意団体が、自らを構成する団体の条件を「協会加盟社と準ずる機関」と規定するのは自由ですが、「協会加盟社と準ずる機関」という大手メディアだけしか入れない記者クラブが、知事会見など公的情報を排他的に独占している実態には大きな問題があります。新聞労連が記者クラブ改革の方向として主張しているように@記者クラブを希望する全メディアに開放したゆるやかな組織にする、Aクラブ加盟社も非加盟社も差別なく情報にアクセスできるシステムに改める。

いずれかの方向に改革しない限りは、将来的な県民の批判には耐えられないのではないでしょうか。クラブに安住しているだけでは仕事にならない時代がきているにもかかわらず、各メディアは、日々の仕事に追われ、問題意識が一部の記者を除いては感じられません。