2006年4月30日

連載 記者クラブを考える
@県政記者室の独占使用に根拠なし

  県政記者室の投げ込みボックス

2001年、長野県が「脱記者クラブ宣言」をし、記者クラブが独占的に使用してきた「記者室」を廃止。すべての「表現者」に開放された「表現センター」を設置したことは大きなニュースになりました。あれから5年。高知県内の記者クラブの実情と今後の方向性を、県政記者室を中心に考えます。

県庁本庁舎の2階にあがるとすぐ左手に県政記者室があります。面積は111・65平方メートル(約34坪)、日当たりのよい南側の「一等地」で、「県政記者クラブ」(14社※)と経済記者クラブ(12社、県政記者クラブにすべて含まれる)に加盟する各社が机を置いて私設の電話やインターネットを引き継続的に使用しています。家賃や光熱費は無償。記者専用の駐車場も無償で18台分が用意されています。

記者室には通称「投げ込み」と呼ばれる各社用のボックスが設置され、県がマスコミに発表したい時にはボックスに資料を配るだけで簡単に各社に伝達できるシステム。県関係では他に西庁舎3階に「教育記者室」、安芸総合庁舎、県警本部にも同様の記者室があります。

慣例

民間企業であるはずのマスコミが何故県庁の一角を独占的に反復継続して使用でき、専用駐車場まであてがわれているのでしょうか。根拠を県広報課に聞くと「記者室を置くことで県が県民に広報したい時にコストがかからず便利。県業務の一環としていてもらっている。許可などはしていない。県民や市民団体がマスコミに知らせたい時に利用できるという利点もある(元吉貴世江課長)」。

つまり県の広報という「業務」のための使用であるから庁舎の「目的外使用」にはあたらない(平成6年9月30日総務部長通達)という判断が唯一の根拠になっています。

県の「投げ込み」は平成16年度で2016回(1日8件程度)にも達し、この他にも県民からの広報の依頼が年間1332件。県政記者室は広報センターとして大きな役割を果たしています。しかしながら、それが記者クラブ加盟社だけが県庁の一角を独占的に使用できる理由にはなっていません。記者クラブ加盟社以外にも報道活動をしているメディアは多くあります。雑誌、週刊紙、地域ラジオ局、政党や宗教機関紙、タウン誌、ケーブルテレビ等。特定の媒体を持たないフリー記者、今後はインターネットで表現する市民記者なども増えてくる可能性もあります。

これらの記者が希望すれば差別なく記者室を利用できなければおかしいとの指摘に対して「記者室は県政記者クラブだけに貸しているわけではない。契約や覚え書きのようなものはない。慣例としかいいようがない。確かにクラブ以外の報道機関が使えないのはおかしいと言われればそうだろうと思う(元吉課長)」。
県政記者クラブ加盟社 高知新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞、日本経済新聞、共同通信、時事通信、NHK、テレビ高知、高知放送、高知さんさん、朝日放送、日本農業新聞