2008年3月2日

連載 続・高知市同和行政の今
H「児童館」指導員を6人増員 同和行政終結に逆行 

増員が予定されている介良児童センター。この日は17人の小学生が来ていた
高知市教育委員会が平成20年度から旧同和地区を特別扱いする「逆差別」であるという批判の強い「児童館」に勤務する指導員(児童厚生員)を、一挙に6人増員する計画を持っていることが明らかになりました。

同和行政を根拠づける法律が失効して5年以上経過しているにもかかわらず、同和行政終結に逆行して増強・永続化していく高知市教委の特異な方針に批判が高まりそうです。

児童厚生員の所属は18年度まで市長部局の同和対策セクションでしたが、19年度から市教委人権教育課に移行されました。20年度の増員計画は西山、河ノ瀬、小石木、介良、一宮の「児童館」と弘岡中集会所(春野)の6人。19年度は3人増員(南横、宮寺、豊田)されていることから、人権教育課に移行降の増員は計9人。トータルの人員は27人となり、わずか2年で人員が1・5倍に増えるという、他の部署では考えられない現象が生じています。

19年2月には高知市人権施策推進本部が「同和対策関連施策の見直しについて」という文書を公表し、この中で児童厚生員の数についても「組織・事業の見直しの中で、適切な配置を行う」としていましたが、「児童館」の活動内容も、館の配置も旧同和地区だけを特別扱いした特別措置法時代と何ら変わらない中で、人員だけが増えています。

吉岡潤・市教委人権教育課長は増員の理由を「全館に指導員を複数配置するため。今回の増員が認められれば、今後は増やすことは考えていない。同和行政という歴史的経過があるが、一般対策として子どもの居場所づくりの一環として考えている」との回答。

しかし、「児童館」を利用できる子どもは、地理的な要因とともに、利用のための情報が旧同和地区内の児童にしか伝わらないことから、極めて限られた人数になっており、日々の利用実態を指導員に聞くと多くの館で「5〜8人くらい」。「一般対策」とは名ばかりで、旧同和地区を対象にした無料の特別対策が継続されているのが実態です。一方で市民のニーズが極めて高い「放課後児童クラブ」の指導員は48クラブ、99人(市直営分)で貧弱な体制のまま。このようにバランスを欠く人員配置が許されるのでしょうか。

※「児童館」 「子どもに健全な遊びを提供する」ために児童福祉法に基づいて設置された児童福祉施設。同和行政とは関係ないが、高知市では旧同和地区だけに市民会館(隣保館)とセットで作られており、朝倉総合、南横、西山、河ノ瀬、小石木、小高坂、一宮、介良、長浜の9館がある。宮寺、豊田、弘岡中の3館は運動スペースがないなど児童館の基準に達しない集会所だが、同様の活動をしている。小学生低学年が学校帰りに指導員の監督下で宿題をして遊ぶなど、学童保育的な利用が主。また中学生向けには公立中の定期テスト直前に教員が夜間、館に出向いてテスト対策の勉強会を開いている。特定地域でだけ教員がテスト対策をするのはおかしいという批判が根強くあるが、「部落差別を受けている児童生徒の『進路保障』のため」に取り組まれている。利用はすべて無料。利用案内は旧同和地区外には公開されない仕組みのために実態はほとんど知られていない。(2008年3月2日高知民報)