2008年2月17日

連載 続・高知市同和行政の今
F春野町との合併の中で 「同和向け住宅」

春野時代には広報で全町民対象に募集されていた
平成20年1月の高知市と春野町の合併にともない、春野の138戸の旧同和向け公営住宅が高知市住宅課に引き継がれることになりました。

合併以前の高知市の旧同和向け公営住宅は約2000戸。「市民会館」、「児童館」、同和団体への随意契約による「仕事保障」とならび、現在も残る高知市同和行政の4本柱として大きな比重を占めています。

同和対策を根拠付ける法律が失効した14年以降に高知市は旧同和向け住宅について、以下の方針で臨んできました。

「『同和地区に1年以上居住するもの』とする入居資格を削除する。ただし建設の経緯を踏まえ、今後においても一定の措置を講ずることとする」(14年2月高知市同和対策推進本部発行、「同和関連施策の見直しについて」)
 
さらに法失効後5年の「見直し」では「地域の厳しい実情に配慮し、当面の間、一定の措置を講ずる」(19年2月、高知市人権施策推進本部)

「当面の一定の措置」

居住資格が撤廃され、市民誰もが希望すれば入居の応募ができるようになったことは、当然のこととはいえ一歩前進ですが、ここには重大な問題点が隠されています。

「当面の間、一定の措置」だけでは何のことか見当がつきませんが実態は以下。

入居募集要項を旧同和地区内だけしか知らせない。

募集要項を全市民に配布される市広報「あかるいまち」には掲載せず(一般住宅の公募は掲載されている)、旧同和地区だけの「市民会館」が配布する「館だより」だけにしか載せないというのが「一定の措置」の内容です。

いくら居住資格が撤廃されていても、入居の募集の事実を知ることができなければ、市民が応募することはできません。限定した一部の市民だけしか募集の事実を告げないという措置の結果、旧同和向け住宅への応募者数は一般向け住宅と比べて極めて少なくなっています(一般の市営住宅の競争倍率は概ね20倍、旧同和向け住宅では2倍程度)。旧同和向けであっても一般住宅であっても同じ市営住宅のはず。旧同和地区のみを特別扱いする「逆差別」的な扱いがどうして許されるのしょうか。

高知市営住宅条例では市広報などによって公募することが義務付けられており、「館だより」で一部住民だけにしか知らせないのは条例の精神にも反しますが、この「根拠」とされているのが、その内容も期限も明らかでない「当面の間、一定の措置」なのです。

逆行
 
旧春野町では旧同和向け住宅(同町では公営住宅は旧同和向けしか存在していない)の居住資格の制限(1年以上の地区内居住)が残っていたため、合併後は、この制限は撤廃されました。しかし、春野では入居募集の周知については「広報はるの」で全町民に実施してきていました。

合併後の周知について市住宅課では「これまでの高知市と同じような周知の方法になるのではないか」。住宅が農村部に位置する春野の場合、住民が固定化する傾向が強く「募集は滅多にない。数年に1件程度」(旧春野町産業建設課)というのが実際ですが、合併前には全住民を対象に行われていた周知が、合併後は「限定周知」。ここにも同和行政終結への逆行が現れています。(2008年2月17日高知民報)