2008年1月13日

連載 続・高知市同和行政の今
B春野町との合併の中で 「隣保館」

正職員が2人に「増強」された春野弘岡中市民会館
2008年1月1日。春野町が高知市と合併しました。この合併は「吸収合併」で、高知市の行政水準に春野町の従来の行政を合わせる方式です。問題の多い高知市の同和行政に、春野町の同和行政がどのように合流していくのかをレポートしていきます。

はじめに高知市と春野町での同和行政の違いを見ておきましょう。

春野町には同和対策関連法に基づいて指定されていた旧同和地区が2つありました。現在は隣保館=弘岡中町民館、秋山町民館が設置され、教育集会所を使用して「こども会」への加力学習が行われています。また旧同和向け町営住宅が138戸(同和向け以外の公営住宅はない)、保育士が加配された旧同和保育所、大型作業場もあります。

高知市では同和行政の根拠法が平成13年度末に失効して以降も、市政中枢に部落解放同盟が強い影響力を行使していることもあり、同和・人権啓発課という課が今日も存在し、相当部分の同和行政を実質的に残している実態があります。

しかし春野町のような小規模自治体では、同和を冠した課はとうに消滅。隣保館=町民館(国からの補助金が現在は続いている)の運営や、「こども会」への加力学習など残事業はあるものの、町職員に同和行政について話を聞くと、「もう法律は切れてますからね」という言葉が何度も出たり、残存する同和行政についても「もうやめるべきだと思う」という声が聞かれたりと、町政における同和行政の比重が高知市よりも遙かに低く、職員もある程度は自由な発言ができるという高知市より「進んだ」ような実態もありました。

旧春野町の部落解放運動団体の主流は、今は故人となった保守系ボス議員を中心にした「春野町真政会」や「春野町同和会」という潮流であり、部落解放同盟の力が歴史的に弱かったというのも特徴です。
 
正職員2人体制へ

現在残存している同和行政のうちでもっとも規模が大きく、人員が割かれているのは隣保館。合併によって旧春野町の2つの町民館は「市民会館」へと名称が変わり、人員体制も高知市並に。春野時代は正職員1、非常勤・臨時2でしたが、弘岡中・秋山それぞれの市民会館は非常勤・臨時職員を雇い止めにして正職員を2人ずつ配置しています。

両館の「守備範囲」の「属人」人口は約700人。館の距離は直線で1・5キロしか離れていません。同和行政の根拠法が失効して6年がたつ今日、狭いエリアにこれだけ正職員を配置することが果たして適当でしょうか。また隣保館運営費への国の補助金は、あと数年でカットされる可能性が濃厚です。同和行政の根拠法がすでに消滅していることを考えれば当然の流れといえます。

遠からず来る「Xデー」に備え、隣保館の人員を非常勤へとシフトしておくことは行政として当然考えていかねばならない課題ですが、今回の合併により、この流れに逆行して館に配置する正職員を増強しています。

高知市同和・人権啓発課に「人員増強は縮小の流れに逆行するのではないか。ニーズがあるのか」と聞ききましたが、「まずは高知市の水準にあわせてもらう」。地域の実状から出発するのではなく、機械的に高知市の水準に合わせて人員を増強するやり方には疑問が残ります。(2008年1月13日高知民報)