2008年7月13日

連載 続・高知市同和行政の今
22隋契解消 「同和行政」終結へ前進

和解を終えコメントする原告の田所氏
部落解放同盟系列の高知市労働事業協会に委託した清掃業務が特命随意契約のために高額化したとして岡崎誠也・高知市長などに損害賠償を求めていた住民訴訟が、高知市が岡崎市長の任期中に「政策目的」による特命随契を廃止することを確約したことで7月1日、和解しました。

和解にむけた協議は7月1日午後、高知地裁で行われ、協議の中では原告の市民オンブズマン高知のメンバーは「来年度からの契約は認められない」、高知市は「市長の任期中に解消する」という双方の主張を裁判所が調書に書き込むことで和解が成立しました。和解により原告は訴訟を取り下げ、訴訟費用は被告(高知市)が負担します。

和解を終えた田所辨蒔・市民オンブズマン高知代表は「特定団体を念頭に置いて法的根拠のないまま漫然と繰り返してきた契約にピリオドを打つことには意義がある。高知市はこれからすべての随契を見直すと言っているので、これを監視し、おかしいことがあれば再び提訴もありうる」とコメントしました。

一方、岡崎市長は取材に答え「和解が成立してほっとしている。これから平成23年度末にむけてすべての随契を見直していかなければならないので、すぐに庁内に実務部隊を立ち上げ作業に入っていく」と述べました。

岡崎市長の任期中(23年11月)に「同和」をはじめ法的根拠のない特命随契を解消することを市が表明したことは、高知市に根強く残る「同和行政」終結にむけた重要な前進といえます。

高知市に現存する「同和行政」は@「市民会館」(隣保館)、A「児童館」、B旧同和向け市営住宅入居応募での特別扱い、C「仕事保障」=清掃・警備業務の同和団体への随契委託の4本柱。「同和随契」の解消により、この4本柱の一角が崩れ、実質的に同和団体への公的資金の流入が絶たれることを意味します。

今回の随契問題について部落解放同盟高知市連絡協議会にコメントを電話で求めたところ対応した女性職員が、「議長(竹内千賀子高知市議のこと)も、事務局長も休んでいる。いつ事務所に出てくるかは全く分からない」と繰り返すだけ。「ではいつかければよいのか」と聞いても「分からない」の一点張りで、「ではそちらから電話をかけてもらえないか」と依頼しても「それはできない」という対応でした。自由同和会高知県本部の堀川重明会長は「相談しながらやっている。もうえい、もうえい」と取材に応じませんでした。

残される課題

高知市が「同和随契」解消へ大きく舵を切る一方で、残されている課題もあります。

@解消期限 高知市は「市長の任期中に解消する」期限を23年度末(24年3月)であると主張しています。岡崎市長の任期は23年11月。この主張でいくと岡崎市長の任期が切れる時点でも随契が残っていても構わないということになり、「任期中に解消する」という裁判所と原告への確約に誠実な態度とはいえません。 

A春野地区ゴミ収集 高知市は現在、旧春野町の一般ゴミ収集委託業務を「株式会社春野清掃」に特命随契で委託しています。「春野清掃」は旧春野町が覚書によって団体補助金の代わりにゴミ収集委託業務の随意契約を確約していた「部落解放団体連合会」を法人化して名称を変えた会社。

岡崎市長は1日夕、合併にともない春野地区のゴミ収集については「土佐山・鏡も元々とっていた地元業者にとってもらっているので、そこはちょっと整理しなければならない」とコメントし、解消すべき随契にあたらないというニュアンスの発言をしました。

しかし、今回の裁判所の違法性の指摘は「同和」や「合併」という政策の是非ではなく、「清掃」や「ゴミ収集」は、「地方自治法施行令第167条2の1項2号」を理由に同和団体などに随契してはならないというものであり、岡崎市長の認識は不十分と言わざるをえません。ゴミ行政を担当する市環境部の内部からも「春野のゴミ収集は合併だから特別というのは通用しないだろう。早急に解消すべきだ」という声が聞かれます。

高知市は早急に随契解消にむけたプロジェクトチームを立ち上げて、見直し作業に入るとしていることから、その場での議論が注目されます。(2008年7月13日 高知民報)