2008年7月6日

連載 続・高知市同和行政の今
21和解案可決 同和随契廃止へ

部落解放同盟系列の高知市労働事業協会に委託した清掃業務が特命随意契約(※)のため高額化したとして岡崎誠也・高知市長などが損害賠償を求められている住民訴訟の和解を認める議案が6月26日の高知市議会本会議で賛成多数(反対は市民クラブだけ)で可決しました。

本会議採決に先立つ24日、議案を審議した総務委員会では上田隆司・市企画財政部長が、これまでの高知市の同和団体への「仕事保障」=清掃などの特命随意契約が、同和団体への補助金の代替措置として今日まで続けられてきた経過を説明。「価格が随契によって著しく高くなったことはない」、「法解釈上可能という判断でやってきた」などとこれまでの施策を正当化しながらも、「裁判所から特命随契に法解釈上疑義を指摘され、和解を勧告されている。よっぽどでなければ随契はダメというように国の流れが変っており、法令に基づき随意契約を可及的速やかに解消したい」と、これまでの特命随契による「仕事保障」を廃止して和解を成立させる考えを強調しました。

質疑では部落解放同盟高知市連絡協議会出身議員を抱える市民クラブの議員が、和解案に強く抵抗。「オンブズマンが言おうが、裁判所が言おうが、基本的な理念を貫いてもらいたい」(浜田拓議員)、「一地裁の疑義があるという一言で、政策変更するのは理解できない」(田鍋剛議員)などと発言しました。

しかし他会派から同調する意見は出ず、法令を順守するため廃止期限を切って和解成立を求める意見が相次ぎ、採決では賛成多数で和解議案が可決されました(賛成は新風ク、自民、共産、公明、無所属。反対は市民ク)。

和解議案の採決を受けて原告の田所辨蒔氏は取材に対し「岡崎市長の任期中には決着してもらいたい。和解協議にはそのことを踏まえて臨む」と話しました。

和解が成立すれば高知市の同和行政の4本柱(@「仕事保障」、A「市民会館」、B「児童館」、C旧同和向け市営住宅での特別扱い)の一角が崩れ、同和行政の完全終結に向けた重要な一歩となります。同時に市が団体との間で水面下で形を変えた代替案を探る可能性も否定できず、監視を強める必要があります。

主な質疑の内容

浜田拓議員(市民ク) 特別な事情があれば随契はできるのではないか。解放同盟市協のいう「仕事保障」はある程度前進したが、今切って、他に仕事がある状況ならともかく、今までの背景経過をたどれば、裁判所に疑義があるとかどうとか言われることはない。行政の裁量権で通せる。

上田企画財政部長 今までならそうかもしれないが、地方自治法改正で随契できる相手がシルバー人材センターなどに限られ、それ以外はだめということになっている。

浜田議員 市長の政治姿勢に疑問がある。お上が言ったらその通り。地方自治・分権はなんなのか。自治こそが民主主義の基本だ。声の大きいほうに引きずられている。オンブズマンが言おうが、裁判所が言おうが、基本的な理念を貫いてもらいたい。

上田企画財政部長 あくまでも法のたてりでやっており、法制担当も入って検討している。世の中の流れがそうなっている。

田鍋剛議員(市民ク) 30年間、高知市の重要政策としてやってきたことを、和解をきっかけに政策変更しようとしている。(同和地区の)就労雇用は大事だと総括しているのではないのか。

福島郁夫・企画調整課長 今回の裁判で問われているのは政策ではなく随契の法的根拠。裁判所に言われれば見直さざるをえない。

田鍋議員 高知市の政策はこの30年間変っていない。一地裁の「疑義がある」という一言で政策変更するのは理解できない。

上田企画財政部長 裁判所に「疑義がある」と言われて、「そうではない」とは言えない。

迫哲郎議員(共産) 裁判所が和解を勧告する重みを考えるべき。特命随契に明確に違法性があると認めたからこそ和解を勧告したと思う。「可及的速やかに、段階的に」の中身についてはこれから原告と協議するのか。

上田企画財政部長 その通り。和解の議決後、原告と話をする。

迫議員 「可及的速やかに」というのは非常にあいまいだ。

上田企画財政部長 これから詰めていく。

迫議員 少なくとも岡崎市長の在任中に解決するべきだ。

戸田二郎議員(自民) オンブズマン側は期限を切らないと和解に応じないと言っている。どこかで線を引かなくてはならない。 

上田企画財政部長 年数は協議の中で出る。例えば市長の任期中などが出てくる可能性はある。

中野城久議員(公明) 一地裁の判断でも日本は法治国家、大変重要だ。(2008年7月6日 高知民報)