2008年6月15日

連載 続・高知市同和行政の今
Q職場研修の現状

「差別落書き」が発見された高知市内のトイレ(高知市はりまや町)
高知市役所で職員に実施している同和問題の研修の実態はどうなっているのでしょうか。

市人事政策室によると高知市の職員研修の基本は、@階層別研修、A職場人権研修の二本立てになっています。

@階層別研修は、採用3年、5年、10年、新任の係長や課長が対象で、県下の全市町村でつくる「こうち人づくり広域連合」に委託して実施。

同連合の事務局には、高知市の前同和対策課長が派遣されており、同和問題に関連する研修は、公務員倫理、セクハラ、メンタルヘルスなどと並んでの「人権学習・人権問題」の中で触れられますが、同連合での研修を受けた関係者は「『七つの人権課題』の中で確かに同和問題も出てくるが、かつてのように『解同』一辺倒のようなものではない」。

A職場人権研修は、7月から9月にかけて全職場で全職員を対象に実施され、講師は課長職の職員が務めることになっています。7月上旬に講師を務める課長が集められて人権研修推進員研修が実施され、資料の提供を受けます。今年度は上野昇一・同和・人権啓発課長、吉岡潤・市教委人権教育課長がこの課長向け講習の講師を務める予定。

上野・同和・人権啓発課長は取材に答えて「落書き事件(6月8日号に掲載)を、市民の中にある差別意識の根深さのあらわれとして職員研修の教材にしたい」と述べていることから、今年の職場研修では「落書き事件」がクローズアップされることになると思われます。しかし、実際の職場での研修テーマの選定は課長の裁量に任されており、旧態依然とした「同和研修」はもうやらないという課長も増えてきています。

ある市幹部は「以前いた職場では、昼休みを使ってハンセン病や、高知空襲についての勉強をしたが、同和問題はやっていない」と話すなど、「同和研修」が職場で必ずしも受け入れられているわけではないのが実態です。

もちろん現在の高知市役所には「解同シンパ」の管理職も多く、また課長が問題意識を持っていなければ、上から流されてきた資料を、そのまま使うだけの研修になる職場もあります。「研修の内容は課長による。職場ごとにそれぞれだ」(人事政策室)。前述の幹部職員は「研修を課長にやるせることがプレッシャーになっている面はあるかもしれないが、昔のように同和だけが突出したような雰囲気は職場にはない」。高知市が、根拠法が失効して7年目を迎えた今日でも懸命に「同和行政」を残すことに固執している一方で、職員の意識の変化は確実に進行しています。(2008年6月15日 高知民報)