2008年6月8日

連載 続・高知市同和行政の今
P「差別落書き」への対応

「差別落書き」が発見された公園のベンチ(高知市長浜)
同和行政を根拠付ける法律がすべて失効した平成13年度末から7年目をむかえた今日、かつてのように同和地区出身を理由にした封建的な差別は姿を消し、県人権課が集約している同和問題に関する差別事象一覧でもほとんどの部分が、生徒による「発言」と「落書き」になっています。

生徒の「発言」は、教科書に載っている「使ってはいけない言葉」を、発達途上の生徒がふざけて発したようなものであり「部落差別」とは次元の異なるもの。また落書きは誰が何の目的で書いたものかも分かりません。いずれも一握りの者の行為であり、行政が取り立てて騒ぐようなものではないことは明白です。

2008年4月12日。高知市瀬戸地区で市道の停止線上にフェルトペンで書かれた「差別落書き」が発見されました。前後して同一人物が書いたと思われる同様の落書きが周辺の量販店の建物、電柱、ベンチ、銀行ATM、公園のトイレなどにも多数書かれていました。書かれていた内容は、特定の女性を名指して「○○○の×××は△△」などと部落問題と関連付けて誹謗中傷するものでした。

4月12日は土曜日でしたが、高知市の反応は迅速で、発見した数時間後には同和・人権啓発課や道路管理課の職員が動員され現場へ。「差別落書き」の発見マニュアルに従い保存・連絡・記録され、第一報から数時間後には高知南警察署に被害届が出されています(その後、落書きをした32歳の男は南署に逮捕された)。

落書きの内容からは、書いた本人と名指しされた女性との間に、個人的な関係があったことが考えられます。また名指しされた女性は旧同和地区出身者ではなかったといい、結果的には個人間の感情のもつれが原因のトラブルで、「部落差別」などといえるものではありませんでした。

この「落書き」について上野昇一・同和・人権啓発課長とのやりとり。

−−個人間のトラブルであり、「部落差別」とはいえない。

上野 確かに直接的な部落差別ではないかもしれないが、そういう言葉が出てくる背景には、市民の中の差別の根深さがある。

−−部落解放同盟が確認学習会をやるという話はあるのか。

上野 ない。ただ市民の差別の根深さの事例として、研修用の題材として使っていく。

−−書いた本人への対応は。

上野 法務局と一緒にうちの課員が出向き、本人に正しく理解させるために話をする。市が管理する公園のトイレへの落書きについては器物損壊罪で告訴する。

−−消すためにかかった費用を負担させるだけではだめなのか。

上野 しなければ、なぜ告訴しないのかという声もでる。電柱など市が管理していないものにはできないが、市が管理するものについては告訴する。

高知市の公園を管理しているみどり課では「告訴するかどうか課内で検討中。トイレへの落書きは多くあるが、告訴は書いた本人を特定できないことが多く例がない」。また市がかかわる訴訟など法的な処理を担当する総務課では法務担当者が「配属されて10年ほどになるが、器物損壊で告訴したことは市営住宅を壊された悪質な事例が数件あるくらい。落書きで訴えた事例は記憶にない」と話しました(5月30日、高知市長名で建造物損壊3件、器物損壊1件を高知南警察署に告訴している)。(2008年6月8日 高知民報)